知恵の和ノート

2025/02/11

「それ、知っています!」が成長を止める—部下の本当の理解度を見極める質問術(第571話)

カテゴリー :コミュニケーション

「知っている」という答えが返ってきても、鵜呑みにせず、追加の質問で「知っている」のレベル感を見極め、相手の関心事や価値観に応じて伝え方を変える。

「それ、知っています!」が成長を止める

「それ、知っています!」

会話の中で、こちらが発言したことに対して、このような反応が返ってきたことは誰しもあるかと思います。

しかしながら、相手が「知っています」と言った際は

  • 本当は知らないけれど、「知っている」と言う
  • 少しは知っているので、「知っている」と言う
  • 知識として知っているので、「知っている」と言う
  • 知識としてだけでなく、少しは実践しているので、「知っている」と言う
  • 徹底的に実践しているので、「知っている」と言う

など、いろいろなパターンがあります。

 

このような場合、見極めるには、次の質問の仕方に工夫を凝らす必要があります。

例えば、資金繰りを改善するために「粗利を増やす」ことをよくお伝えしています。

 

財務があまり得意ではない経営者でも、「(そんなことぐらいは)知っている」と回答されます。

そこで、「銀行からの返済を今後も続けていくために、毎月いくらの粗利が必要ですか?」と質問すると、「◯◯円です」とその数字がちゃんと頭に入っている人と、「ちょっとすぐには分からない」と回答する人に分かれます。

後者の場合、粗利が大切なのは(知識として)知っているレベルに留まっている可能性大です。

 

次に、毎月必要な粗利の金額を答えた人に対して、「では、先月の粗利はおいくらでしたか?」と質問したら、また、「□□円です」と答える人と、「いくらぐらいだったかなぁ」と答えが曖昧な人に分かれます。

そして、後者の場合は、粗利が大切なのは知っており、(少しは)実践しているレベルに留まっている可能性があります。

 

粗利が大切なことを知識として知っているだけでなく、徹底的に実践している人は、「粗利を増やすことが大切」だとお伝えした後、単に「知っています」と回答するだけでなく、

「本当は粗利率を25%まで増やしたいのですが、現状は20%に留まっているのです」

とか

「前期よりも粗利が減っているので、現在もう少し粗利の確保できる新規事業を検討しています」

といった発言がたいてい出てきます。

 

これは主に経営者とのコミュニケーションの事例ですが、経営者と社員、管理職と部下との間でも似たようなことは起こっているのではないでしょうか。

本当は知らないのに、知ったかぶりをして「知っている」と答える人は論外としても、知識として知っているが、少しは実践しているレベル以下の人への対応は一筋縄ではいきません。

そして、この場合、本質の部分に対する理解が浅かったり、実践する回数が少なかったりするために、「もっと何か妙案はないのか?」とこちらに求めてくることも少なくありません。

 

方向性としては合っているのに、効果が出ない場合

  • 知識や情報が少ない(古い)
  • やり方が良くない(自己流のやり方に固執する)
  • 実践を通した行動量が少ない

ことがほとんどです。

 

そして、このようなケースで、「それは知っている」と言う人に

  • 知識や情報が少ない(古い)→「知識や情報が足りない(古い)ですよ」
  • やり方が良くない(自己流のやり方に固執する)→「そのやり方は間違っていますよ」
  • 実践を通した行動量が少ない→「行動量が足りないですよ」

とストレートに伝えても、すぐには納得しません。

 

したがって、「知っています」という答えが返ってきた場合は

追加の質問で「知っている」のレベルを見極める
  ↓
見極めたレベルと相手の関心事や価値観に応じて伝え方を変える

ことが求められます。

特に相手との間でまだ信頼関係を築けていない場合には、「それ、知っていますから」で話の流れを変えようとする人がいるので、気をつけましょう。

 

いずれにせよ、相手が「知っています」と言った時は鵜呑みにしないことが肝要。

本当に物事が分かっている人は、たとえ自分が知っていることを相手が伝えた際に、「知っています」で会話を終わらせずに、

  • 自分の持っている知識や情報と何が違うのか
  • 自分の今取り組んでいることに活かせることはないか

という形で、こちらから話を引き出そうとします。

哲学の父とも呼ばれるソクラテスは「無知の知」という考え方を基本にしたと言われていますが、「知らないことに対して、いかに謙虚になれるか」がポイントになるのは古代ギリシヤの時代から変らない原理原則です。
 

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