知恵の和ノート
人に仕事を任せるのが苦手なら「引継ぎ表」を活用する (第540話)
権限委譲がまだできていないなら、経営者が休みの間の「引継ぎ表」を作ることで、ペンディング事項の洗い出しと社内での情報共有が実現できる。
7月になり、夏休みの計画を立ている方もおられるかと思います。
メーカーなどはお盆の時期に一斉に休むというケースが多いですね。
一方、サービス業などはお盆の時期は書き入れ時ということで、お休みが取れるのはお盆の時期が終わってからというケースもあるかもしれません。
ちなみに私は38年前に社会人になって以来、勤めていた先はすべて「交替で休みを取る」という会社でした。
さて、サラリーマンと経営者との違いの一つに「休みが与える影響の大きさ」があります。
会社に勤めている時は交替で休みを取る場合であっても、「自分が休みを取っても、仕事が完全に止まることはない」のが普通です。
一方で、経営者の場合、「経営者が休みを取ると仕事が完全に止まる」ことがあります。
経営者が決裁しないと、
・お客様と商談できない
・新商品の開発が進まない
・お金をまったく使えない
といった状況だと、会社が休みでなくても開店休業と同じです。
もちろん、お金に関してはリスクの問題もあります。
けれども、
・一定の範囲で小口現金を用意する
・金額10,000円以下の支出なら事後決裁でもOKとする
といった方法で運用することも可能です。
一方で、お客様との商談であれば、日頃から
・どのようなお客様が自社のお客様なのか
・そのお客様のどのような悩みを解決するのか
・その悩みを引き出すためにどのような問いかけをするのか
を社員が概ね理解していれば、「経営者がいないと商談が進まない」という状況は避けられるはずです。
いわゆる権限委譲が行われないと、「経営者が休むと会社の仕事が止まる」という事態はなかなか解消できません。
ただ、そうは言っても、「心配でなかなか社員にはなかなか任せられない」とおっしゃる経営者が多いのも事実です。
そのような経営者にお勧めしたいのが、「自分が休みを取る期間の引継ぎ表を作る」ことです。
銀行に勤めている時は1週間の休みの前に「引継ぎ表を必ず作る」というルールがありました。
夏休みを取る前にはできるだけ前倒しで仕事をして、休暇期間中に、会社から「あれはどうなった?」となるべく電話がかかって来ないようにしました。
とはいえ、休みの期間中にお取引先の借入返済期限に借換手続をしないといけないといったことが起こります。
このよう場合、事前にできる手続はやったとしても、「7月25日にA社の社長が書類と印鑑を持ってくるので、5,000万円の証書貸付を実行してください」と同じ課の人に依頼せざるを得ません。
このため、そのような主旨を引継ぎ表に書いて、引継いでもらう人に説明するという流れがありました。
引継ぎ表を書くメリットは
- 期間中のペンディング事項を洗い出す
- そのペンディング事項を会社の中で共有する
ことで、誰かが休んでも、
- 仕事が止まる状況を避ける
- 仕事が止まることでお客様に迷惑をかけない
状況を作り出すことです。
いちいち引継ぎ表を書くのは面倒くさいかもしれません。
しかしながら、ペンディング事項を言葉として書き出すことで、自分の頭の整理にもなるし、引継ぐ相手にもより多くの情報が正確に伝わります。
以前、あるクライアントさんは病気になって会社をしばらく休まざるを得なくなりました。
最初は「自分がいないと、会社の仕事は回らない」と心配していたそうです。しかしながら、病気が治って職場復帰すると、「自分が不在でも、社員はちゃんと仕事をしてくれるんだ」ということに気づき、それ以降はできるだけ社員に仕事を任せるよう方向転換されたのです。
経営者が病気などで急に休むと、どうしても社内は一時的に混乱します。一方で、夏休みなど予め決まっている休みであれば、事前の準備を行うことも可能です。
特に「人に仕事を任せるのが苦手」という経営者は、この夏に「夏休み期間中の引継ぎ表」を使って社員に仕事を任せることに挑戦していただければと思います。
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