知恵の和ノート
数字は信用の入口、本当に問われるのはあなたの言動(第577話)
事業計画で綺麗な数字を積み上げても、それだけでは不十分。「約束を守る姿勢」「誠実な対応」を日々積み重ねることが信頼の礎となる。
“Can I borrow ?”(お金を貸してくれますか?)
海外に駐在していた時、雇っていた運転手さんから毎月最低1回は聞いていたフレーズです。
日本のように電車や地下鉄などの交通網が整備されていないため、会社に行くにも、ちょっとした買い物に行くにもクルマは必需品でした。
一方で、道路事情や交通マナーが悪く、原則として駐在員は自分で運転することが禁止されていました。そのため、多くの家庭で運転手を雇うのが一般的でした。
給料は月2回の現金払い。しかし、現地には「宵越しの金は持たない」風潮があるのか、給料を渡してから1週間もすると、「お金を貸してくれ!」と言ってくるのです。
他の駐在員の方のアドバイスもあり、私がお金を貸す際に決めていたルールは次の2つでした。
・貸す金額の総額は毎月の給料の範囲内に収めること
・返済は月2回渡す給料から天引きすること
彼が借りたいという金額は、日本円に換算するとせいぜい数千円。しかし、これをなぁなぁにしてしまうと、借りる金額がどんどん増え、なかなか返さなくなる人も多いという話を聞いていました。そのため、最初にお金を貸す際に、上記のルールを明確に伝えました。
この結果、日本に帰国するまでの間、金銭的なトラブルが起こることは一切ありませんでした。
信用とは何か?
お金を貸す側にとって、一番の心配は「貸したお金がきちんと返ってくるかどうか」です。
先の運転手さんの事例では、
・返済原資である給料を貸す側が管理している
・給料から天引きすることで確実に回収できる
という仕組みがあったため、貸し倒れのリスクは低く抑えられていました。しかし、一般的な会社の借入の場合は、そう簡単にはいきません。
企業が金融機関から融資を受ける場合、どれほど立派な事業計画を作ったとしても、それだけで信用を得ることはできません。金融機関が本当に知りたいのは、「この会社は約束を守るか?」「返済のために真剣に取り組むか?」という点です。
信用を築くために必要なこと
企業が金融機関からの信用を得るためには、次のような行動が求められます。
1.借りたお金は期日通りに返済する
どんなに利益が出ていても、返済が遅れると信用は大きく損なわれる。
2.問題が発生した場合は、早めに報告し相談する
返済が厳しい状況になった際、事後報告ではなく事前に金融機関に相談することで、柔軟な対応が可能になる。
3.約束したことをきちんと守る
事業計画に基づいた行動を実践し、定期的な報告を怠らない。
つまり、金融機関が企業を信用するかどうかは、日頃の言動の積み重ねによって決まるのです。
数字も大切だが、最後は「人」
金融機関は当然ながら数字を重視します。しかし、同じような業績や事業計画を持つ企業でも、融資を受けられるかどうかは「その会社が信頼に足る存在かどうか」によります。
たとえば、ある企業が順調に成長しているにもかかわらず、銀行からの追加融資を断られたケースを知っています。その企業は以前、金融機関に対して虚偽の報告をしたことがありました。数字上は問題がなくても、約束を守らない企業は信用されません。
逆に、一時的に業績が落ち込んだ企業でも、誠実に報告を続け、返済計画をしっかりと示している場合は、金融機関も協力的な対応を取ることが多いです。
信用は一朝一夕では築けない
「信用は築くのに時間がかかるが、失うのは一瞬」と言われます。
企業経営においてもこれは同じです。いくら素晴らしい事業計画を作っても、それだけで信用されることはありません。日々の行動の積み重ねが、最終的に信頼へとつながります。
つまり、事業計画で綺麗な数字を積み上げても、それだけでは不十分。「約束を守る姿勢」「誠実な対応」こそが、企業の信用の源泉となるのです。
ちなみに前述の運転手さん、運転の技術は確かだったのですが、お金を管理する技術はいま一つ。やはり信用面には欠けるので、厳密なルールの適用は必要不可欠でした。
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