知恵の和ノート
成長を邪魔する「見えない足かせ」—会社の初期設定を点検せよ!(第578話)
初期設定を見直す機会がないと、いつのまにか会社の常識になり、気がついた時には大きな損失につながるリスクあり。
「デフォルトが『2』になっているんですよ」
ある日のこと。外出途中で資料をコピーしようと立ち寄ったコピー屋での出来事です。
コピー機が途中で紙詰まりを起こしたので、トラブルを解消して再びコピーを開始しようとしたところ、印刷枚数の表示が「2」になっていました。
「あれ、間違えてボタンを押しちゃったかな?」と思い、リセットを押してみました。ところが、枚数は変わらず「2」のまま。「おかしいな?」と思いながら手動で「1」に修正し、念のためもう一度リセットを押してみると、なんと再び「2」に戻ってしまうではありませんか。
「もしかして…?」と不安になり、すでにコピーしたものを確認してみると、驚いたことに、全ての資料が2枚ずつ印刷されていました。
どうやら、このコピー機は初期設定で印刷枚数が「2」になっていたようです。
受付で確認すると、スタッフの方がにっこり笑いながら「余分なものまで印刷しちゃいました?」と一言。怒る気にもなれず、ささっと精算を済ませて店を後にしました。
当たり前だと思っている「初期設定」は本当に正しいのか?
このコピー屋さんは時々利用していましたが、これまで印刷枚数の初期設定を気にしたことはありませんでした。カラー印刷がデフォルトになっていることは知っていたので、いつも色の設定は確認していましたが、枚数設定まで気にしたことはなかったのです。
私にとって「リセットすれば、印刷枚数は1になる」というのは当然のことでした。しかし、今回の経験で、その「常識」が必ずしも普遍的なものではないことを思い知らされました。
会社の初期設定も、見直すべきでは?
このような「デフォルトの思い込み」は、会社の経営や業務の中でも起こります。
例えば、
・商品の標準価格や販売ロット数
・広告予算やマーケティング戦略
・社員の給与体系や評価基準
・会議の頻度や意思決定プロセス
これらの初期設定は、一度決められると「会社の常識」となり、なかなか見直されることはありません。しかし、ビジネス環境は常に変化しており、以前は適切だった設定が、現在では最適とは限らないのです。
初期設定を見直さないと起こり得るリスク
コピー機の初期設定が「2」になっていたことで私が被った損失は、せいぜい数十円。しかし、企業の場合、このような初期設定の見直しを怠ることで、数百万円、時には数千万円もの損失につながることがあります。
例えば、
・価格設定が市場のニーズと合わず、競争力を失う
・広告戦略が時代遅れで、効率の悪い投資になっている
・労働環境が変化しているのに、古い制度のままで社員のモチベーションが低下する
こうした「見えない損失」は、企業の成長を妨げる大きな要因になりかねません。
初期設定を定期的に見直す仕組みを作る
では、どのようにして会社の初期設定を適切に見直していけばよいのでしょうか?
1.「なぜ?」を問い直す
- 「この設定は本当に今の環境に合っているか?」
- 「この数字は誰がいつ決めたものか?」
- 「もしゼロから決めるとしたら、同じ設定にするだろうか?」
2.データを基に判断する
- 直感ではなく、実際の売上データや市場調査を活用する
- 競合他社の動向も参考にする
3.現場の意見を聞く
- 会社の意思決定層だけでなく、実際にその設定を活用している社員の声を取り入れる
- 顧客からのフィードバックを活用する
4.定期的なレビューを行う
半年ごと、あるいは1年ごとに「初期設定見直し会議」を開く
必要に応じて変更を行い、継続的に最適化を図る
新年度こそ、会社の「デフォルト」を見直すチャンス
新年度が始まるこの時期は、会社の方針や計画を見直す絶好のタイミングです。
「これまでこうだったから」という理由だけで続けている設定はないでしょうか?
もしあるなら、ぜひこの機会に一度立ち止まり、改めて「本当にそれが最適なのか?」を考えてみましょう。思わぬムダが発見できたり、新しい成長のチャンスが見えてくるかもしれません。
会社の「常識」を見直すことは、単なるコスト削減ではなく、より良い未来を創るための第一歩なのです。
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