知恵の和ノート
市場が縮小する業界の老舗メーカーのヒット商品開発から何を学んだら良いか?(第523話)
良いアイデアを思いついてもヒット商品になるかどうかは別問題。他社の成功事例も参考になる「点」を真似するのではなく、強い意思を持って「点」を「面」に変えることで成果につながる。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
黒板とプロジェクターの組み合わせ。
先日テレビで黒板の老舗メーカーが「黒板に直接投影できるプロジェクター」を販売して、業績を伸ばしている事例が紹介されていました。
少子化が進む中、ホワイトボードの普及も重なり、学校の教室で使われる黒板の需要も減り、同業他社の数も年々右肩下がり。
そのような中、その会社ではありそうでなかった「黒板に直接投影できるプロジェクター」のアイデアを思いつき、今まで作ったことのないプロジェクターの制作に挑戦し、ヒット商品を産んだのです。
経営者がそのアイデアを思いついたのは東京駅で行われていたプロジェクションマッピング。
東京駅の駅舎を彩る艶やかなショーを見て「黒板でも似たようなことができるのでは?」と閃いたそうです。
イノベーションは組み合わせから生まれると言われています。
黒板を作る会社もあれば、プロジェクターを作る会社も以前からあります。
しかしながら、
・プロジェクターを使うなら白いスクリーンが必要
・ホワイトボードであれば、プロジェクターが使える
というのが一般的な常識。
このため、黒板とプロジェクターの組み合わせはなかったという訳です。
そして、実際に販売してみると
・先生は板書する時間が節約できる
・プロジェクターから投影された黒板の上に先生がチョークを使って補足説明を板書できる
というメリットもあり、生徒たちからも好評価。
しかも、従来の黒板でも十分に画面が投影されているが
より見やすいプロジェクター投影用に特化した黒板を販売
↓
黒板もセットで新たに売れる
という効果もあり、今期の決算では過去最高の18億円の売上を達成できる見込みです。
[「がっちりマンデー!!」(2024年3月10日放送参照)]
皆さんはこの事例を知ってどのように思われたでしょうか?
経営者の中には次から次へといろいろなアイデアが思いつく方がおられます。
しかしながら、それを実際に商品やサービスに落とし込んで、売上につなげられるかどうかは別問題です。
良いアイデアを思いついた
↓
商品・サービスにする
↓
その商品・サービスが売れる
には、いろいろな要素が組み合わさって初めて実現されます。
テレビなどで取り上げられるのは成功して、上手くいった事例が大半です
そして、番組では
・プロジェクターを作る際にどのくらい苦労したのか
・商品開発を進めるにあたって、市場調査にどのくらいの時間をかけたのか
については、ほとんど触れられていませんでした。
このため、
- 既存の自社商品と何かを組み合わせると良い
- 仕事とは関係ない所に新商品開発のヒントがある
- 業界の常識を一度は疑ってみる
- 市場が縮小している業界でもビジネスチャンスあり
といったように、参考になる「点」だけを真似しても上手くいきません。
もし、アイデアはいろいろ思う浮かぶけれども、なかなか売上や利益に結びついていないとしたら、欠けている要素は複数あります。ただし、欠けている要素は「これを絶対やり遂げる!」という強い思いがあれば、補う方法は必ずあります。
前述の老舗メーカーさんの場合には、おそらく市場の縮小に対する危機感があったのではないかと推測しています。
危機感がきっかけとなって強い思いが生まれるのか、高揚感が契機となって強い思いが生まれるのかは人によって違います。
けれども、意思なきところに決断なし、決断なきところに結果なし。
そして、強い思いがあれば、他社の成功事例から学べる点も線となり、やがて面となります。
なお、焦点の当て方が変わると、豊富なアイデアがシュッとまとまる可能性があります。アイデアは豊富にあるが、なかなかまとまらないという方は「こちら」がお役に立てます。
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