知恵の和ノート
「短所は直さず、長所を伸ばせ」では業績は伸びない(第522話)
法人である会社の場合は「短所は直さず、長所を伸ばせ」では業績が伸び悩みます。短期的には短所を直しながら、長期的に長所をさらに伸ばしましょう。
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「短所は直さず、長所を伸ばせ」
人材育成でよく言われる言葉です。
短所はなかなか直らないのを前提に、長所をさらに伸ばした方が人は早く成長するという理屈です。
ただ、個人の場合はそれで大丈夫であっても、法人である会社の場合、業績を安定させるには「短所は直す」方が短期的には効果が大きいです。
会社の仕事を
集客:見込み客を集める
↓
受注:見込み客に提案して売上を上げる
↓
提供:商品やサービスを提供する
↓
展開:リピートや紹介につなげる
で考えると
・集客に苦戦していて売上が伸び悩んでいる
・セールスしても受注率が低い
・商品やサービスの満足度が小さい
・リピートや紹介につながらない
など、ネックになるプロセスはいろいろです。
人手不足が深刻化しているため、「お客様からの問い合わせは多いが、全部の仕事を対応しきれない」という場合。得意である集客よりも「商品をいかにして安定して提供できるか」を優先して取り組んだ方が業績は安定します。
これを簡単な数字を使って説明してみます。
前述の4つのプロセスをそれぞれ10段階で評価した場合、満点なら
集客:10×受注:10×提供:10×展開:10=10,000点
となります。
そこで、仮に現在の評価を
集客:8×受注:6×提供:3×展開:3=432点
とします。
得意な集客にさらに力を入れて他は変わらなかった場合は
集客:9×受注:6×提供:3×展開:3=486点
です。
一方、課題のあった商品の提供を改善して他は変わらなかった場合は
集客:8×受注:6×提供:4×展開:3=576点
となります。
すでに8点のレベルにあるものを9点に上げるには、かなりの努力と困難を伴います。しかしながら、4点のレベルのものを5点に引き上げるためにやれることはたくさんあります。
つまり、同じ1点でもレベルの高い所で上げる1点とレベルの低い所で上げる1点では費用対効果や時間対効果の点で違いがあります。
そして、お客様は総合的な観点から会社を評価します。このため、長所と短所の組み合わせにもよりますが、ボトルネックになっている部分を改善した方が前述のように総合点で高く評価されることがあるのです。
会社という組織で行動している場合
長所がたくさんあっても一つの短所がボトルネックとなる
↓
会社としての評価を落とす
↓
業績が安定しない
ことが起こります。
逆に
ボトルネックとなっている短所を一つ改善する
↓
会社としての評価が上がる
↓
業績が安定する
ということも起こるのです。
現在では大手企業でも、すべての仕事を自社の社員だけで対応するとは限りません。グループ会社を利用することもあれば、業務委託先と協力してサービスを提供することも少なくありません。
一方、お客様からすれば、「A社の商品だから買った」「B社のサービスなので、信頼した」というように、提供する側の内部事情と関係なく、「お客様←→会社」という観点から総合的に評価します。
人の本能は不快を避けるので、見たくない事実からは目を背けがちです。そして、複数の人が関わる会社の場合は見たくない事実に蓋をする傾向がさらに強くなる可能性があります。
だからこそ、個人では通用する「短所は直さず、長所を伸ばせ」では力不足。
短期的には短所を直しながら、長期的には長所をさらに伸ばす。
一つの短所をそのまま放置すると、やがて、それが会社の当たり前になるので、難しくても、二刀流を目指しましょう。
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