知恵の和ノート
プレスリリースを書く意味はどこにあるのか?(第493話)
プレスリリースを単にメディアアプローチのためのツールとして使うのではなく、会社をさらに成長させるためのツールとして有効活用することに大きな意味がある。
プレスリリースを書く意味はあるのか?
どのような仕事であれ、仕事においては結果を求められます。人はその結果に満足すれば、その仕事を続けるでしょうし、満足しなければ、その仕事を続けていくことが難しくなります。
商品やサービスを知ってもらうための方法はいろいろありますが、その一つがプレスリリースを書くことです。
プレスリリースを書く→メディアで取り上げられる→商品やサービスを多くの人に知ってもらう→商品やサービスが売れる
これが多くの人がプレスリリースを書く目的です。このため、頑張ってプレスリリースを書いても、メディアの取材につなげられないと、意味がないと考える方もおられます。
しかしながら、私は結果としてメディアの取材につながるかどうかに関わらず、プレスリリースを書く意味はあると考えています。
プレスリリースを始めたきっかけ
私が最初にプレスリリースを始めたきっかけは、あるコンサルタントの方からのアドバイスがきっかけでした。
その先生は起業家向けに集客方法やマーケティングなどを教えている方だったのですが、「やる順番としては先にプレスリリースを書いて認知度を上げてから、集客した方が効果は高い」とおっしゃっていたのです。
商品を見ず知らずの人に買ってもらうには、何よりも信用が大事です。特に単価の商品を買ってもらうには、「この会社の商品を買っても大丈夫なのか?」という関門をクリアする必要があります。
この点、トヨタのような大企業なら既に一定の信用があるので、大丈夫かもしれません。しかしながら、弊社のような中小零細企業の場合は、どうやって信用してもらうかが、商品の売上にも大きく関わってきます。
「プレスリリースを書く→新聞やテレビで取り上げられる」と、少なくとも一定の信用が得られるので、「まずプレスリリースを書きましょう」という話はすごく合点がいったのです。
そこで、そのコンサルタントの先生の講座に行って、プレスリリースの書き方や出し方、そして、それをどう売上につなげていくかという一連の流れを学んだのです。
最初に書いたプレスリリース
私が最初に書いたプレスリリースは「1人バイト総務部立ち上げサービス」に関するものでした。
このサービスは「中小企業の社長を対象に、日々お忙しい社長を雑務から解放することで、社長が自分の一番得意な仕事に集中できる体制を3ヵ月で整え、人に依存せず、仕組みで仕事を回す土台をしっかりと築く」ことを目的に始めたサービスです。
「社長の手放す仕事を見極める→業務フローを整える→アルバイト社員に仕事を引継ぐ」という一連の動きを弊社がサポートするというものです。
実際には既にクライアントに対しては、顧問契約の範囲内で似たようなことをやっていました。しかしながら、特に一人社長の方や個人事業主の方など、どうしても仕事を一人で抱え込みがちな方がたくさんおられたので、パッケージ型のサービスとして始めることにしたのです。
プレスリリースの書き方の基本
プレスリリースの書き方の基本として学んだことは
(1)ヘッダー部分が大切
(2)社会的意義が大切
(3)新規性(ニュース性)が大切
ということでした。
(1)ヘッダー部分が大切
新聞記者などメディアの人は皆さんとてもお忙しいので、まずはプレスリリースのヘッダー部分を見て、ゴミ箱に入れるか、続きを読もうとするかを決めます。このため、ヘッダーに何をどう書くかはとても大切です。
ちなみに、私が書いたプレスリリースのヘッダーは以下の通りでした。
↓ ↓ ↓
3ヵ月で社長を雑務から解放する!「1人バイト総務部立ち上げサービス」
10月21日に無料説明会を開催
~ 人材不足に悩む中小企業を逆転の発想で着実に成長させます ~
(2)社会的意義が大切
プレスリリースは広告宣伝と違うので、単に商品やサービスの特徴や効果を書くだけでは取り上げられません。
もちろん、世界でも初めてとなる画期的な技術開発に成功すれば別でしょうが、多くの場合、社会的意義や今の時代にどのような影響を与えるのかを客観的な事実を基に書く必要があります。
ちなみに、私の場合は、中小企業白書を参考にして、以下のようなことを書きました。
↓ ↓ ↓
■日々雑務に追われる経営者からの相談増加の背景
~人材を確保できない中小企業の存在~
「中小企業白書(2015年度版)」によると、事業の維持・拡大を志向する企業の抱える経営課題のうち、上位3つは、「求める質の人材がいない」(22.1%)、「人材の人数が足りない」(18.6%)、「社内人材の教育・育成」(15.3%)といずれもヒト(人材)に関するものがあがっています。また、同白書によると、人材の確保状況は、「十分確保できている」が6.7%と1割に満たず、「十分ではないが確保できている」が37.1%と4割弱となっており、中小企業が人材を十分に確保できていないという実態があります。
(3)新規性(ニュース性)が大事
トヨタが新車を発表すれば、それだけで一定のニュース性があると判断されます。しかしながら、中小零細企業の場合は、新商品や新サービスを発表しても、それだけではニュース性があるとは判断されます。
「なぜ、それが新しいのか」「なぜ、今なのか」をしっかりと書いて伝えないと、ニュースとして取り上げる意味がないと見なされる恐れがあります。
実際、この部分は私も苦慮したところで、前述の「~人材を確保できない中小企業の存在~」の後に、以下のように書くに留まった感じです。
↓ ↓ ↓
◎「1人バイト総務部」を導入するメリット
・社長に時間的な余裕が増えて、社長にしかできない仕事に専念できる
・時給1,000円のアルバイトに仕事を任せることで、人件費・外注費が削減できる
・顧客対応を強化できれば、顧客満足度が上がり、売上がアップする
中小企業においては社長にかかる負担が大きく、仕事を社員に引継ごうと思っても、マニュアルの作成など引継ぐための準備に時間をかける余裕がありません。このため、会社の業務をきちんと整理して見える化し、いつでも誰かに引継ぎできる体制を整備することで、優秀な人材が確保できない場合はクラウドソーシング等の活用も視野に入れながら、少人数でも仕事が回る社内体制を早い段階で作ることが求められています。
プレスリリースの配信
自分なりに工夫して書いたプレスリリースを前述のコンサルタントの先生にもチェックしてもらい、プレスリリースを出すことにしました。
プレスリリースを出すには
・記者クラブ等に持参する
・郵送で送る
・プレスリリースの配信サービスを利用する
といった方法があります。
そして、最初のプレスリリースは最後の「プレスリリースの配信サービスを利用する」という方法を選択し、3万円ほど使って配信してもらうことにしたのです。
プレスリリースを出した結果
では、最初に私が書いたプレスリリースはどうなったかと言えば、結果的にはメディアからの取材はありませんでした。
利用した配信サービスを使って追跡調査したところ、29件ほどWeb記事にも掲載されたことは確認できました。ただ、これらは取材されて掲載されたものではなく、単にプレスリリースの概要をそのまま掲載するものだったので、厳密にはカウント対象外(苦笑)。
↓ ↓ ↓
つまり、
プレスリリースを書く→メディアで取り上げられる→商品やサービスを多くの人に知ってもらう
という点では当てが外れた訳です。
プレスリリースを書いて得られたもの
しかしながら、最終的な目的である「商品やサービスが売れる」という点では上手くいきました。
実はプレスリリースを書いた以外にも
・説明会を開催するためのランディングページを作る
・ランディングページを見てもらうための広告を出す
・メルマガやSNSなどで説明会をご案内する
ことに取り組んだ結果、説明会にご参加いただいた経営者の方から複数お申込みがあり、当初予定していたよりも売れたのです。
要因はいろいろありますが、一つにはプレスリリースを書く仕事に取り込むことによって、自社の商品を客観的に見つめることができたことです。
おそらく、最初に書いたプレスリリースはメディアの人には、「どれほど社会的な意義があるのか」が伝わらなかった可能性があります。
自社の商品についてはどうしても思い入れが入ります。また、「この商品で少なくともこのくらいの売上を上げたい」という捕らぬ狸の皮算用が加わります。
しかしながら、自社商品のお客様ではないメディアの人からすれば、
・すごい商品って言うけれど、どこがどれだけすごいのか
はよく分かりませんし、ましてや
・商品が売れることで、その会社がどれだけ儲かるのか
については関心がありません。
広告の場合は、キャッチコピーで見込み客の関心を引いて、セールスレターで見込み客の人に「これなら自分が直面している問題を解決できるかも」と思ってもらったら、直接的に売上につながります。
一方のプレスリリースの場合は、派手なキャッチコピーはご法度であるのに加え、「その商品は買わないけれど、この商品をもっと多くの人に知ってもらうことは意義がある」と読み手に思ってもらうのが最初の関門になります。
このため、思い入れがあり、自信もある自社商品であっても、いったん突き放して見てみることが大切になります。
弊社がプレスリリースをお勧めする意味
プレスリリースを使ったメディア戦略については、元新聞記者の方やテレビ局にお勤めだった方などが本を出版されたり、様々なサービスをご提供されたりされています。
そのような中で、メディア出身者でもない私たちがなぜプレスリリースをお勧めするのかについて、疑問に思われる方もおられるかもしれません。
実際、私が最初に書いたプレスリリースはメディアの取材につなげられませんでした。また、別のサービスではプレスリリースを書いて新聞には掲載されたけれど、あまり売上につながっていないものもあります。
クライアントさんでは、
プレスリリースを書く→メディアで取り上げられる→商品やサービスを多くの人に知ってもらう→商品やサービスが売れる
というケースはあります。しかしながら、弊社自身としては、まだプレスリリースの王道としての華々しい成果を上げられた訳ではありません。
けれども
・メディアからは取材されなかったけれど、説明会は毎回ほぼ満席だった
・書いたプレスリリースは出さなかったけれど、見つかった切り口をベースに情報発信したところ、売上につながった
・新聞等に掲載された記事を読んだ方から新たに問い合わせをいただいた
・日頃の仕事の中で、社会的に意義があるかどうかという観点をお伝えすることで、クライアントさんが新たな気づきを得られた
・仕事で取り組んでいることをまとめる形で本を出版することができた
という様々な波及効果があるのを実感しています。
商品やサービスを売る際には。「これさえやれば大丈夫です!」とついつい言いたくなります。しかしながら、17年以上会社を経営して感じるのは、「これさえやれば大丈夫です!」というのはないということ。
会社経営は総合格闘技のようなものであり、一つのツールややり方だけで会社が直面している問題をすべて解決するのは不可能です。
そういう意味では「プレスリリースを書けば売上が上がる」とは言いません。けれども、
プレスリリースを書く→新たな視点や気づきがある→結果として売上が上がる
というのは事実であり、広告宣伝費というお金を使わないでできる仕事として、やらないという選択肢はないと考えています。
プレスリリースはメディアアプローチのためのツールですが、Amazonでは、プレスリリースを社内で活用することが仕事の中での当たり前になっています。主要なプロダクト開発や新規事業に着手する前の必須ツールとしてプレスリリースが使われています。
プレスリリースを単にメディアアプローチのためのツールとして使うのではなく、会社をさらに成長させるためのツールとして有効活用することに大きな意味があります。
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