知恵の和ノート
財務はお金を稼がないが、お金を稼ぐ源泉となる(第491話)
財務の一番大切な役割はお金の観点から会社経営に必要な判断材料をタイムリーに示すこと。言い換えれば、どうやったら会社がもっと儲かるかを示す材料を作るのが財務の役割です。
「財務で何ができるのか?」
クライアント先の経営者と話をしている際、このテーマが話題になりました。
バブル期に「財テク」という言葉が流行りました。
余ったお金や銀行からの借入金を金融商品などの投資に回して利益を上げるという手法です。
しかしながら、高い利回りを得るにはリスクも大きく、大きな損失を出した企業も続出したことから、「財テク=無謀で危険な投資」というイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
その反動もあって
・財務はお金を稼がなくてもよい
・財務はお金の管理だけやっていればよい
・財務は銀行借入だけ上手くやってくれたらよい
と考えておられる経営者もおられます。
そして、中小企業の場合。
・経理と財務の区別が曖昧
・社長が実質的に財務の役割を担っている
ケースがあります。
私は財務の一番大切な役割は「お金の観点から会社経営に必要な判断材料をタイムリーに示すこと」と考えています。言い換えれば、「どうやったら会社がもっと儲かるかを示す材料を作る」のが財務の役割です。
例えば、
今月末にいくらお金が余っているか(足りないか)を示す
↓
お金に余裕があるなら、どのくらいのリスクまで許容できるかを示す
お金が足りなら、どのような方法で不足分をカバーできそうかを示す
↓
それぞれの対応策について、モニタリングしながら次善の策を打ち出す
という感じです。
これができるためには単に数字の計算が正確にできるだけではダメ。
- 売上の状況を取引先別、商品別、事業部別、確度別など 特徴に応じて把握する
- 単に売上高だけではなく、そこから生まれる粗利や、いつお金が入っているかといった時間も頭に入っている
- 毎月の定例の支払に加えて、納めるべき税金の金額や更新料の支払いなど数年に1回発生するお金の動きもつかんでいる
- 試算表や資金繰り表など、銀行借入に必要な資料がすぐに提出できるよう日頃から準備をしている
- 普段使っていない資産を換金する場合、時価はいくらぐらいで、換金するまでどのくらい時間がかかるかを理解している
といったことが求められます。
したがって、社長があまり数字に強くない会社の場合、財務担当者は時には社長以上に会社のことをよく理解していないと務まりません。
中小企業で財務関連の人材を募集する場合、「経理業務の経験がある人」を条件にしているケースが散見されます。
しかしながら、今や会計システム等も進化しているので、定型的な勘定科目の仕訳や請求書の発行や管理、給料計算などはアルバイト社員に任せることも可能です。
一方、前述のような要件を満たしながら、「お金の観点から会社経営に必要な判断材料をタイムリーに示すこと」に関しては、会社によって把握すべき数字が違います。このため、その部分をアルバイトやアウトソーシングに任せるのはかなり難しいです。
経理業務はアウトソーシングすることは可能ですが、財務業務はアウトソーシングできません。なぜなら、財務は経営判断と不可分だから。
財務は直接お金を稼ぐ仕事ではありません。また、財務マジックのように何か「これをやれば必ず儲かります」というものはありません。
ただし、だからと言って財務を軽視していると
・経営環境が大きく変化した時に後手に回る
・メリハリの効いた事業投資ができないため、他社との間で知らない間に差がついてしまう
・いざという時に資金繰りが回らなくなる
恐れがあります。
財テクに走る財務はお勧めしませんが、会社の財務機能をより強化することは会社の長期的な成長を実現するためには不可欠。
もし、社長が「自分が一番得意なのは営業」と自覚しておられるなら、財務から提供される判断材料を活かすことで、さらにその営業力に磨きがかかります。
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