知恵の和ノート
事業計画は下から作り、少しずつでも利益を見える化して目標に近づける(第489話)
たとえ見たくなくても数字と向き合って、必要な利益の金額をつかみ、その利益を少しずつでも社内で見える化することで会社は成長する。
事業計画は下から作る。
これは銀行から借入したいといったご相談を受けた際、いつもお伝えしていることです。
「下から」の意味は、「手元にお金をいくら残したいのか」から逆算して出した「利益」の金額からです。
例えば、毎月100万円ずつお金を増やしたいと考えた場合。
モデルケースとして
・利益にはおおよそ40%が税金等を差し引かれる
・毎月20万円ずつ借入金の元金を返済する
・固定資産等の減価償却費は0円とする
とした場合
(100万円+20万円)÷(1-0.4)=200万円
の利益が毎月必要な利益の金額になります。
これに給料や事務所の家賃等売上があるかないかに関わらず毎月かかる固定費が1,000万円とした場合。
200万円+1,000万円=1,200万円
を売上高から原材料費等を差し引いた売上総利益(粗利)で儲ける必要があります。
仮に過去の平均として売上高の50%が原材料費や商品の仕入れでかかっているとすれば
1,200万円÷(1-0.5)=2,400万円
が目標とする毎月の売上高になります。
毎月の数字を把握されていない社長さんに前述のような手順で計算した数字をお見せすると、反応は様々です。
すごくやる気になる人もいれば、「こんな数字はとても無理」と感じて、かえって落ち込んでしまう人もいます。
また、売上高ばかり追いかけていた社長の場合は「もっと利益率を上げなきゃダメか」と気づきを得る方もいれば、「まずは無駄な経費を削ろう」と経費の削減に着手される方もおられます。
いずれの場合でも、まず大切なのは「見たくない不都合な事実と向き合う」ことです。
収益の大半を占める売上高は発行する請求書の金額を合計すれば分かります。また、固定費や原材料費などの費用の数字も給与台帳や送られてくる請求書などから計算することができます。
このため、よく見えにくいと言われている利益も本来であれば
収益‐費用=利益
という形でつかめるはずです。
ただ、実際には
・取引の件数が多い
・請求書がなかなか送られてこない
・数字をチェックする人がいない etc.
といった要因で、「毎月必要な利益が確保できているのかどうかがすぐに分からない」会社も多いです。
このため、前述の「見たくない不都合な事実と向き合う」ことが終わった後は、「少しずつでも利益を見える化する」です。
例えば、商品1個売れば、いくらの利益が出るのかを把握したい時。
厳密には原材料費や製造のかかるコストや、製造に携わる人の時間単価、商品を1個作るのにかかる時間等を計算する必要があります。
しかしながら、正確に利益を出そうとするあまり最初から原価計算を厳密にやようとすると
・複雑すぎてなかなか進まない
・計算に時間がかかりすぎて指標として使えない
ことになりかねません。
それゆえ、まだ慣れないうちは
まずは原材料費と外注費だけをコストとして利益を把握する
↓
その利益額や利益率を見て改善策を立てる
↓
次に製造に関する電気代やガス代をコストに組み込んで利益を把握する
↓
その利益額や利益率を見て改善策を立てる
↓
次に製造に携わる社員の人件費をコストに組み込んで利益を把握する
↓
その利益額や利益率を見て改善策を立てる
といったように徐々に会社として把握したい利益の精度を上げるほうがかえって早く改善が進みます。
そして、その際のコツは「同じ基準で数字を比較する」ことです。
つまり、会社としてのルールを決めて、「今月から3ヵ月間は原材料費と外注費をコストに入れて利益を計算する」というルールを周知徹底することが必要です。
もし、社員の中に「外注費はコストに入れるけれど、原材料費はコストに入れない」といった人がいると、数字の比較ができなくなります。
先日も、クライアントさんとの打ち合わせしている際、「在庫として持っている材料をコストに入れない人が出てくるかも」という話になりました。
もし、商品1個当たりの利益を把握したいなら、過去に購入して在庫として持っている材料も入れて計算しないと、正確な利益はつかめません。
けれども、社員の中には
・新しく購入したもの→コストがかかった
・在庫として持っているもの→コストがかかっていることを忘れている(認識していない?)
かもしれないので、気をつけましょう。
まとめると
「手元にお金をいくら残したいのか」から逆算して出した「利益」の数字を知る
↓
その利益を踏まえ、同じ基準で数字を比較した上で少しずつでも利益を見える化する
ことで、次の打ち手が見えてきます。
業績が悪くなると、ついつい数字を見たくなくなるのは人の心情としてよく分かります。一方で、見たくないので、避けていると益々不安に陥る可能性もあります。
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