知恵の和ノート
資金繰りをより安定的に回すなら、一貫性をベースに一時期な不安定状態を意図的に作り出す(第446話)
できる社長は危機感を煽って社員に行動を強要するのではなく、自分の心意気を軸に社員の共感を生んで、社員を新しい行動に自然体で導く。
会社で事業を続けていくためにはまずは資金繰りが回る必要があります。
今月末の支払いが厳しいという状況であれば
・新たな契約を取る
・売掛金を前倒して払ってもらう
・月末に支払う予定のものを少し待ってもらう
・銀行からお金を借りる
・手元の資産を売却してお金を作る
といった方法を駆使して資金繰りを回すことが求められます。
一方、当面資金繰りの心配はしなくて良い状況であれば
・新商品を開発する
・新規事業の立ち上げに向けて人を採用する
・広告宣伝費を使って商品の認知度をアップする
・古くなった機械を最新の機械に置き換える
・必要であれば銀行からお金を借りて投資する
といったことに取り組むことになります。
資金繰りが厳しい状況はとても不安定です。
そして、その不安定な状況から抜け出すために、
・やれること
・やるべきこと
はある意味限られています。
一方、資金繰りがそれほど厳しくない場合、会社として、いわば安定しています。
しかしながら、その安定的な状況から抜け出して、さらに安定的な状況を実現するためには
・やれること
・やるべきこと
は無数にあります。
例えば、「新商品を開発する」と一言で言っても
・誰向けの商品なのか
・どのような問題を解決する商品なのか
・価格はいくらが妥当なのか・・・
など、開発した商品が売れるまでにはクリアすべき課題がたくさんあります。
このため、安定的な状況から、次のさらなる安定的な状況に移行するまでの間は、どうしても一時的に不安定な状況に陥ります。
・誰向けの商品なのか→当初の見込み客にはまったく売れない
・どのような問題を解決する商品なのか→競合他社も既に似たような商品を販売している
・価格はいくらぐらいが妥当なのか→景気後退の影響を受けて、最初の販売予定価格では「高い」という評価されている
つまり、仮にいま資金繰りに問題がなくても、長期的に資金繰りを安定させるためには、会社は一時的に不安定な状況に陥るということです。
そして、この不安定な状況とは「お金や時間を使っても、思ったような成果が出ない」というもので、たとえ当面の資金繰りには、さほど影響を及ぼさなくても「それなら、このように効果が出ないことは止めた方が良い」という雰囲気が社内に生まれてきます。
その際、鍵を握るのが「社長の心意気に沿った仕事への取り組み姿勢」です。
もちろん、資金繰りを頭に入れつつ、どこまでだったら損失を許容できるかを予め見極めておくことは大切です。
けれども、昨今は世の中のニーズがより複雑化し、各人の価値観も多様化しているので、思ったような成果が出るまでに従来よりも時間がかかります。
そして、人は本能的に変化を嫌うので、「いまは会社も安定して、毎月きちんと給料ももらえているので、すぐに成果が出ない余計な仕事をしたくない」という気持ちが働きます。
このため、社長が「まだ会社に余裕がある時に、長期的な成長を見据えて、会社を改革しよう」と思って、いろいろと手を打っても、「笛吹けど踊らず」の状況がどうしても生まれがちです。
経営状況が追い込まれてからの改革は社員にも危機感があるし、やれることややるべきこともハッキリしているので、一定の効果は出やすい傾向にあります。
一方、経営状態が安定している状況で行う経営改革の場合、社員にはさほど危機感がありません。また、やれることややるべきことも無数にあるので、上手くコントロールしないと、途中で頓挫する恐れがあります。
それゆえ、経営状態が比較的安定している状況で、思い切った経営改革を実現するには「社長の心意気をベースに一本筋を通す」ことが有効です。
社長の心意気をベースにした会社のビジョンやミッションに社員が共感して、「なんだか面白そう」「実現したらワクワクするかも」と感じたら、無数にある選択肢の中で
「今回はAがダメだったけれど、次はBをやってみよう」
「Cが要因で上手くいかなかったので、そこを改善しよう」
「調べたらDの方が性能も良く、値段も安いので、これを使ってみませんか」
という行動につながる可能性があります。
「勝って兜の緒を締めよ」ではありませんが、資金繰り的に追い込まれてから行う経営改革より資金繰りにある程度余裕がある時に取り組む経営改革の方が数倍楽だし、数倍楽しいです。
なお、社長を突き動かす原動力である心意気を軸に会社を経営する「心意気経営」についてエッセンスを動画にまとめました。
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