知恵の和ノート
離職率が高い場合は、経営理念から戦略や戦術、評価基準の順番に整える(第408話)
社員はこのまま会社にいても不満が変わらないと感じると会社を辞めるので、離職率が高い場合は経営理念、戦術や戦略、評価基準を整えるのが先決。
社員が会社を辞める構造とは
最近あったご相談の一つが「離職率が高いので、なんとかしたい」というものです。
その際、先方への提案の中でご説明したのが、組織学がご専門の立教大学の中原淳教授からお聞きしたお話。
中原先生によると、「人は不満だけでは会社を辞めないが、不満が変わらない時に会社を辞める」とのこと。
どんなに素晴らしい会社であっても、社員の価値観は一人ひとり異なるため、何かしらの不満は生じます。
けれども、その不満が「不満が不満のままで一向に解消する目処が立たないのか」「不満はあっても、少しずつ改善される動きがあるのか」では、社員の受取り方も大きく違ってくるという訳です。
離職率を下げるためにまず取り組むべきこと
この場合、社員の個々の不満にあまり引きずられてしまうと、かえって問題をややこしくします。
そこで、我々がお勧めしているのは、
- 経営理念は社員の共感を得られているのか
- 戦略や戦術は経営理念と一貫性が取れているか
- 評価基準は予め分かりやすく提示されているか
について、会社としてまず見直すことです。
経営理念は社員の共感を得られているのか
経営理念を掲げている会社は多いですが、それが社員に深く浸透しているかどうかは、また別問題です。
単に耳障りの良い言葉を並べているだけでは、お客様にはもちろんのこと、社員の心にも響きません。
弊社では、経営理念を
ビジョン:理想とする世界
ミッション:ビジョンを実現するための使命・役割
バリュー:お客様に提供する価値
の三つからなるものとして定義していますが、いずれにせよ、これらの内容を社員が「いいね!」と感じるものでないと、社員も力を発揮できません。
戦略や戦術は経営理念と一貫性が取れているか
次に経営理念と戦略や戦術との一貫性。
経営理念で「お客様やお取引先を大切にする」といった言葉を掲げていても、実際に仕事をする際、「とにかく何でも良いから売上を上げろ」「できるだけ値段を買い叩いて仕入れろ」といった指示を出していることがあります。
外面と内面が違うというか、言っていることとやっていることが違うと、社員はそのギャップを敏感に感じとります。
評価基準は予め分かりやすく提示されているか
そして、社員の昇給・昇格や賞与を決める際の評価基準。
半期毎に上司と部下との間で話し合って、「上半期はこれとあれをやります」と決めている会社もあるかと思います。
しかしながら、その決め方や目標の握り方が曖昧なために、半年経って査定する時に
部下:ちゃんと頑張ってできたのでA判定
上司:これぐらいの実績じゃせいぜいB判定
と評価が分かれてしまうことが少なくありません。
簡単なことではありませんが、評価基準は誰が見ても「これならB判定だ」というものでないと、不満の種になります。
対応すべき不満は継続的に改善する
社員の立場に立って考えてみると、
「せっかく会社の経営理念に共感して入社したのに、普段上司が言っていることは全然違う」
「同じように頑張っているのに、なぜか同期入社の彼とは賞与の金額が10万円も差がついている」
といったことがあると、不満が生じます。
最初から完璧な人事制度や社内体制を作るのは無理なので、少なからず不満が出るのは仕方ありません。
けれども、その不満が改善すべき事項であるなら
・戦略や戦術と経営理念の整合性が取れるよう戦略や戦術を定期的に見直す
・評価基準を明文化して、査定者による差別をなくす
という動きを会社として継続できるかどうかがポイントです。
会社として上から順番に整える
「経営理念−戦略・戦術−評価基準」について言えば、会社が統一的に整えるものです。
ただし、その統一的というのはあくまで、社員に対して一定の公平性を保つという観点から話。このため、常に柔軟性と一貫性を備えておく必要があります。
その際にポイントとなるのは、「階層をつけて常に上から考える」ということ。
つまり
経営理念
↓
戦略
↓
戦術
↓
評価基準
です。
この点、社員を思い通りに動かすという観点では、評価基準に手をつけるが手っ取り早いので、「評価基準を変えよう」と考える経営者が少なくありません。けれども、いくら評価基準を変えても、「この会社は変わらないなぁ」と社員が感じていたら、ちょっと骨のある社員は転職し、「不満はあるけれど、このままこの会社で働いた方が楽だ」という考える社員が社内に残ります。
まとめ
もし、「ウチはいろいろと社員のために手を打っているのに離職率が高いなぁ」と感じておられるのであれば、まずは
- 経営理念は社員の共感を得られているのか
- 戦略や戦術は経営理念と一貫性が取れているか
- 評価基準は予め分かりやすく提示されているか
を見直して、経営理念から順番に整えていきましょう。
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