知恵の和ノート
仕事の権限委譲をスムーズに進めるためのコツを権限と義務の視点から考える(第407話)
社員は会社のためではなく、自分のために働くという前提で、与える権限を明確にし、負わせる義務は最小限にすることから、権限委譲を進める。
権限と義務は表裏の関係にあります。
表現の自由は大切な権利ですが、好き勝手に表現した結果、誰かを傷つけたりすると、その責務を負わなければならないことがあります。
会社で言えば、「社員にある仕事を任せる」という権限を与えることで、社員には「その仕事を遂行する」という義務が発生します。
この場合
- 任せる仕事の範囲
- 仕事の遂行に伴う義務の範囲
が、曖昧なことが少なくありません。
例えば、「ある業務を効率化しろ」という指示を社長が部長に出したとします。
その際、その部長が使える予算の金額を決めていないと、「やれと言ったのに、なぜ、そのシステムを導入しないの?」と社長が部長を叱責することが起こります。
また、仮に予算に関する一定の権限を与えていても、「どうして、そんなシステムを買ったんだ!」と後から指摘されるようだと、社員は「それなら全部社長にお伺いを立てよう」という姿勢になります。
このため、一定の予算権限を社員に与える際にも
・金額による区別(例:100万円以上は社長決裁)
・内容による区別(例:業務システムは取締役会決議)
をハッキリさせる必要があります。
また、仕事の遂行に伴う義務の範囲も社長からすれば、「これぐらいはやってくれて当然」という「これ」が社長と社員との間では違っていることがあります。
「業務を効率化しろ」という指示でも、「今まで10時間かかっていた仕事を9時間で終えられるようになった」というのも、効率化としては成功です。けれども、社長の考える効率化が「10時間かかっている仕事を半分の5時間に短縮する」ということであれば、1時間の短縮では「仕事を任せたのにやっていない」という認識にあります。
また、「この商品で売上1億円を上げる」という仕事を任せた場合に、「1億円達成できない場合は賞与を減らす」といった厳しい条件がついていると、「そんな仕事はできません」と最初から拒否されるか、無理やり数字を上げようとして、お客様にも迷惑をかけるというケースも起こりえます。
先日参加した勉強会で、あるベテラン経営者の方がおっしゃっていたのは
「社長は会社のために働くが、社員は自分のために働く」
ということ。
特にオーナー経営者が多い中小企業の場合、社長にとっては「会社のために働く=自分のために働く」です。
一方、多くの社員にとっては「会社のために働く<自分のために働く」であり、会社のやり方が自分のためにならないと判断したら、転職するという選択肢があります。そして、私のような昭和生まれ昭和育ちの年代と違って、より年齢の若い社員の方は「自分のためにならないのであれば、一つの会社でずっと働く必要はない」という感覚を持っている人が多いように感じます。
社長からすれば、「これだけの権限を与えるのだから、このくらいの成果は残して欲しい」と考えるのは至極当たり前のことです。
しかしながら、「社員は会社のためでなはく、自分のために働く」という前提に立てば、
- 与える権限をまずは明確にする
- 負わせる義務はできるだけ小さくする
ことから始めて、徐々に権限と義務とのバランスを取っていくことが求められています。
この時のマインドセットは「期待を捨てて信頼する」。
「このくらいの成果は残して欲しい」という期待は捨てること。そして、期待通りの成果が出たら相手を信頼するという条件付きの信頼ではなく、「君なら必ずできる」と無条件で相手を信頼すること。
自分のために働く社員も「この人は自分を信頼して仕事を任せてくれたのだ」ということが分かれば、結果的に「自分のために頑張る→会社のためになる」という流れができる可能性が高まります。
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