知恵の和ノート

2021/11/16

社内コミュニケーションを活性化するために必要な前提条件とは?(第402話)

カテゴリー :コミュニケーション

社内コミュニケーションを活性化するには、共有する情報を定義するとともに、否定と責任ととばしを排除する。

社内コミュニケーションを活性化するために必要な前提条件とは?

社内コミュニケーションを活発にしたい

このようなご相談を時々いただきます。

 

  • 会議を開いても、社員が意見を言わない
  • 業務の改善提案がなかなか出てこない
  • 問題が大きくなる前に、情報を把握しておきたい

経営者であれば、社内コミュニケーションを活発にし、風通しの良い組織にすることで会社の業績を伸ばしたいと考えるのは、ごく普通のことです。

一方、先のようなご相談をいただいた後、社員にインタビューしてみると、意外にも「ウチはコミュニケーションは上手くいっています」という答えが返ってくることがあります。


その要因の一つは、「コミュニケーションの対象と考えている情報の定義が経営者と社員とでは違う」ことです。

 

共有する情報の定義を決める


経営者は

・お客さんに関すること

・社員の仕事ぶり

・組織運営上の問題

・競合他社の動向

など、多かれ少なかれ会社経営に関わる情報をタイムリーに把握したいと考えています。


一方で、社員がコミュニケーションが上手くいっていると言った時の対象が時には

・昨日見たテレビの話

・最近流行っている商品

・今日のランチをどこで食べるか

など、他愛のない雑談が対象だったりします。

もちろん、雑談から経営のヒントが生まれることもありますが、それは経営者が求めている社内コミュニケーションの対象とは違います。


また、仕事に関するコミュニケーションでも

・上司に対する愚痴

・仕事に対する不満

・仕事の進め方

だったりすることもあります。


愚痴や不満は上手く集めれば業務改善につながります。しかしながら、社員の間だけで愚痴や不満を言い合っても、ストレス解消にはなっても、それでは会社の業績向上につながりません。

また、仕事の進め方を社員で話すのは悪いことではありません。

ただ、会社としての仕事の進め方を定めないまま社員同士で話して進める場合、人によってレベル感が様々であるため

属人的なやり方が一部の社員の間だけで広まる
 ↓
人や部署が変わった時に余計な混乱を招く

ことがあるので、要注意です。


したがって、「社内コミュニケーションを活発にしたい」という場合は「社内で共有する情報を定義する」必要があります。

つまり

会社として必要と考える情報を定義する
 ↓
その情報に関しては一人が独占せず必ず社内に伝わる

というルールを徹底することです。

 

その際の留意点は

  • 否定しない
  • 責任を問わない
  • とばさない


社員が上げてきた情報を否定しない

 

まず、否定しない

「何でも情報出して」と言って、社員から情報を出させる一方で、「こんな情報は要らない」「ここはダメじゃん」と否定する上司がいます。

 

以前ある会社で「店舗の前の花が枯れていたので、取り換えた」という情報を社員が上げたところ、「これは売上に関係ないから改善に関する情報じゃない」と直属の上司が判断して、その情報を握りつぶしたことがありました。

店舗の前の花が枯れていても、今日の売上には直接影響はないかもしれません。けれども、お客さんの中には、せっかくお店に行こうと思って来たのに、花が枯れているのを見て「この店に入るのは止めとこう」と思った人もいる可能性があります。

 

この場合は業務改善に関する情報について直属の上司が「売上に直接影響するもの」と考えていたので、せっかくの部下の行動を否定してしまったのです。

共有する情報の定義を定めても、最初のうちは多少なりとも混乱します。このため、特に初期段階においては「社員が上げてきた情報をむげに否定しない」ことが大切です。


情報を発信した社員の責任を問わない

 

次に責任を問わない

私がクライアント先で会議のファシリテーションをやる際、よく言うのは「無責任に発言しましょう」です。


自分がよく知らない他部署の仕事に対して「これはおかしくないですか?」と発言すると、その部署の人から「ウチの苦労も知らないのに、無責任なこと言うな!」と反論されることがあります。

けれども、社内でコミュニケーションを活発にしたいなら、このような無責任な質問や疑問は絶対に欠かせません。


また、会社によっては、何か提案すると言い出しっぺの人が「じゃぁ、君がそれ担当して」と指名されることがあります。

本人が自分がやりたくて、その提案をしている場合は良いのですが、中には「会社のためには取り組んだ方が良いけれど、自分が直接やりたい訳ではない」という提案やアイデアもあります。


そのような時、会社の暗黙のルールとして「提案者=責任を持って実行する担当者」という位置づけができてしまうと、「面倒だから黙っておこう」と思う社員が必ず出てきます。

このため、まずは「情報発信者の責任をできる限り軽くする」のがコツです。


情報が届くルートの順番をむやみにとばさない

 

そして、とばさない

これは、特にある程度従業員数が多い会社では特に注意が必要です。


例えば、「社長-部長-課長-担当者」という階層がある会社の場合。

時々、トップが現場の生の声を聞くという位置づけで「社長が直接担当者と話をして情報を得る」ことがあります。

そのこと自体は問題ないのですが、気をつけなければなければならないのが、その後の対応。社長が担当者から話を聞いて、自分は知らなかった情報を入手した際、直接その担当者に指示することは避けた方がベターです。


その情報を

・課長も部長も知らない
・課長は知っているが、部長は知らない
・課長も部長も知っているが、社長だけ知らない

ケースがあります。

このため、社長であれば「最初に部長に確認して必要な指示を出す」ことがお薦めです。なぜなら、部長や課長をとばして社長が担当者に指示を出すことで、指示命令系統が崩れる恐れがあるからです。


短期的にはトップダウンで社長が直接指示を出す方が問題解決の早道です。けれども、それでは、部長や課長など管理職が育ちません。

また、面目をつぶされた部長や課長が部下に対して、「余計なことを社長に言うな」と釘を刺して、かえって大切な情報が上がってこなくなる恐れもあります。

 

ツールを使ったり、スキルを磨く前に場を整える


今は社内コミュニケーションを活発にするために様々なツールがあります。また、コミュニケーションスキルを磨くための研修もいろいろあります。

これらを有効に使うことはもちろん大切です。

けれども、その前提として「社内で共有する情報を定義する」とともに

  • 否定しない
  • 責任を問わない
  • とばさない

といったポイントを押さえて取り組みましょう。

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