知恵の和ノート
人材育成で大切なことを一番役立った社員研修から考える(第401話)
人材育成で大切なことは、会社の戦略を明確にした上で、「基本を学ぶ」「実務で活かす」「成果を自分で実感できる」という要素を取り入れること。
サラリーマン時代、私もいろいろな社員研修を経験しましたが、一番役に立った研修は、銀行員の時に6ヵ月間受講した「デリバティブ(金融派生商品)に関する研修」です。
人材育成という点から見た時、「良かったなぁ」と感じるのは
- 基本を学ぶ
- 実務で活かす
- 成果を自分で実感できる
という点です。
基本を学ぶ
銀行員の場合、融資、預金、為替などについては、最初の新入行員研修の時に学びます。
しかしながら、私が銀行に入った当時はスワップやオプションといったデリバティブは、それほどメジャーではありませんでした。このため、最初の研修では学ばなかったのですが、働いているうちに、お取引先との中でデリバティブに関連する質問が出てくるようになったのです。
支店で、担当先のある上場企業から「為替リスクをヘッジしたいので、スワップの提案をしてほしい」というご要望があったのですが、私はよく分かりません。このため、本部の専門部署の方のご協力を得ながら、なんとか対応したのですが、私の中ではデリバティブに対する苦手意識が芽生えました。
言ってみれば
算数の公式をよく分かっていない
↓
応用問題を出された時に、どのような公式を立てればよいか分からない
↓
算数は苦手だ
という構造と同じです。
しかしながら、研修で最初に学んだのは算数の公式にあたる部分。一見すると、複雑に見えるデリバティブ取引も、公式に当てはまれば、構造が分かって理解できるようになったのです。
このお陰で、私はデリバティブに対する苦手意識を払拭することができました。
実務で活かす
研修では先輩からいろいろな基礎や理論を教えてもらうだけでなく、各支店からの質問に答えるなど「学んだことを実務で活かす」機会に恵まれました。
多くの研修では座学で学んで終わりというものも少なくありません。半日や一日研修では、研修の中でワークという形で手を動かす時間もあります。けれども、ワークという形で実践するのはあくまで練習です。
これに対して、先の研修では、半年間という時間的な余裕もあったので、「実際の取引に基づいて考え、判断し、行動する」という形での実践がありました。つまり、研修とは言いつつも、実際には、その部署に配属されている行員の方と同じ仕事を担っていたのです。
成果を自分で実感できる
研修の最後には、「一人で出張してお取引先に説明する」という仕事がありました。
先の実務で活かすという実践は本部の中にいて対応するもので、何かあったら周りの専門家にいつでも聞ける状況です。いわば、守られた安心の場所での実践です。
これに対して、研修のプログラムにあった最後の実践は「自分自身が本部の専門家として、直接お取引先を訪問する」というもの。
支店の人から
・訪問してほしい会社のリスト
・その会社はどのような課題があるか
を予め教えてもらい、自分で資料を作り、自らデリバティブの専門家として提案するという内容です。
私は鳥取県と島根県に一泊二日で出張し、5社ほど訪問させていただきました。なんとか無事終了し、小さな成功体験でしたが、自分にとっては大きな自信となりました。
戦略に沿って人を育む場を作る
中小企業の場合、お金と時間をかけて人材育成のために、研修に投資するというのはなかなか難しいかもしれません。
しかしながら、
- 基本を学ぶ
- 実務で活かす
- 成果を自分で実感できる
という取り組みであれば、わざわざ研修という形を取らなくても、普段の仕事の中でちょっと工夫すれば、必ず実行できます。
そのためには、会社の戦略に沿って人材育成を位置づける必要があります。
先のデリバティブ研修は、銀行の中で
デリバティブ取引で収益を増やしたい
↓
そのためには本部の部署だけでは人材が不足している
↓
基礎知識を学び、実務を体験する研修を実施することで、デリバティブが得意な行員を増やす
という戦略の一環でした。
どこを、どのように強化したいかは会社によって異なります。そして、人材育成はすぐに効果が出るとは限らないので、どうしても後回しにしがちです。
しかしながら、
業績向上に向けて会社の戦略を明らかにする
↓
その戦略に沿って、どの分野やどのスキルを強化したいかをハッキリさせる
ことで、育成の方向性も見えてきます。
その際、ぜひ
- 基本を学ぶ
- 実務で活かす
- 成果を自分で実感できる
という要素が入っているかチェックしてみましょう。
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