知恵の和ノート
会社を成長させるのは社長の器の大きさではなく、社長の根気の強さ(第294話)
社員に仕事を任せることをよく中断するのは成長が止まる会社
社員に仕事を任せることに挑戦し続けるのが成長し続ける会社
社員に仕事を任せる時、任せる方にはいくつか受け止めなければならないものがあります。
やり方を受け止める。
たとえ仕事のやり方を教えたとしても、言われた方が指示通りにやるとは限りません。しかし、ここでいちいち口を挟むと、相手はやり方を自分なりに工夫したり、新しい発想で取り組むことを止めてしまう恐れがあります。
失敗を受け止める。
任せた結果、上手くいかないことがあります。何をもって失敗と定義するかによりますが、当初に期待していた結果が出なかったことを失敗として評価すると、任された社員は委縮してしまいます。
任せた自分を受け止める。
人に仕事を任せて上手くいかなかった際、最初に頭に浮かぶのが「やっぱり任せるんじゃなかった」という後悔です。
ここで相手を叱責せずに、「任せた自分が悪い」と反省することは素晴らしいことです。けれども、その反省の次に、「でも、引き続き次の仕事も任せよう」と考えるのか、「次は任せずに自分でやろう」という方向に舵を切るのかによって、社員の行動も大きく変わります。
このように考えてくると、優秀で仕事ができる社長ほど仕事を人に任せずに、自分で何でもやってしまうのは、ある意味自然と言えるかもしれません。
さて、中小企業の場合。
社長と社員との間では仕事をこなす実力も仕事に対する意識も大きく異なるのが普通です。このため、会社の規模が大きくなり、社員数も増えてくる中で、「誰に、何を、どこまで任せるのか」については、難しい判断を迫られます。
やり方についてはマニュアルなどが整備されている訳ではありません。
失敗を受け止めると言っても、会社にそれほど資金的、時間的な余裕があるとは限りません。
また、任せた自分を受け入れるということは、頭では理解できても、感情の部分ですぐに納得がいくとは限りません。
先日も、クライアントさんとの打合せの際、「今後会社の体制をどのように整備しながら、事業を拡大していくか」ということが話題に上りました。
既に仕事の実務面では、社員が自立的に取り組んでおられるのですが、その下支えとなる環境部分は現在社長がお一人で対応されています。このため、「次回の打合せでは、会社の戦略として何を優先して取り組むのか、ロードマップを作りましょう」という結論になりました。
3ヵ月後の資金繰りが厳しい時に、いくら人材育成のためとは言え、社員に重要な案件の交渉を任せっきりにするのはリスクが大きすぎます。
一方で、会社の業績は安定しているのに、失敗することを恐れて社員のやることに細かく指示を出していると、長期的に見た際に会社の成長を妨げる要因になります。
また、いったん仕事を任せたら、多少の失敗はあっても、大目に見る度量が社長に備わっていないと、いつまでも社長に依存する体質からは脱け出せません。
「会社は社長の器以上には大きくならない」と言われます。そして、その器の大きさは、社員に対する仕事の任せ方に如実に表れてきます。
- 任せた人のやり方を受け止める。
- 任せた人の失敗を受け止める。
- 任せた自分を受け止める。
これらは、現実問題としては、度量が大きくないと、なかなかできることではありません。
しかし、「会社は社長の器以上には大きくならない」のは一つの真理ですが、会社の規模が大きいからといって、その社長の器が大きいとは限りません。これは、一連の不祥事における経営トップの言動を見ているとよく分かります。
会社の成長過程で一番難しいのは、「人に仕事を任せる」という仕組みがまだ整っていない時に、その仕組みを作って機能させることです。
それゆえ、申し上げたいのは、人に仕事を任せて上手くいかない時に、「自分は器が小さいからダメなんだ」と捉えるのではなく、「難しいことに挑戦しているから、すぐに結果が出ないのだ」と解釈して、粘り強く挑戦し続けることが大事だということです。
難しいことはすぐにできないのは当然です。
そして、その難しいことに挑戦されている社長をサポートさせていただくことに、我々も仕事のやりがいを感じています。
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