知恵の和ノート
冷静な判断と社員への理解をベースに、しなやかに、かつしたたかに対応する(第286話)
相手への反感や共感で、社長と社員との距離感が揺らぐのは成長が止まる会社
社長が社員に理解を示しつつ、対応にメリハリをつけるのが成長し続ける会社
「仕事中に勝手に食事しようが、昼寝しようが、挨拶もせずに途中で帰ろうが、怒ったことは一度もありません」
ある地方で業界トップの業績を上げている経営者さん。最近は日本国内だけでなく、中国やインドでも業績アップのために経営指導されています。
インドでは、経営指導先の社員が勤務中にお客様が来る店内で食事をしたり、昼寝をしたり、勝手に帰ってしまったり、ということが日常茶飯事だったそうです。しかし、「時給120円の人が10万円の商品を売ってくれるのなら、それもやむなし」ということで、多少の不始末は目をつぶったという訳です。
社長としては、社員に対して「我が社の社員として、ふさわしい行動をしてほしい」と考えます。しかし、現実問題として、社長の期待する水準で働いてくれる社員は、そう多くはありません。
さすがに、日本であれば、お客様が来店する店先で自由気ままにランチを食べるという社員はいないと思います。
けれども、
- 清潔な身だしなみを保つ
- お客様から言われた納期を守る
- 今月の売上目標を達成する
となったらどうでしょうか?
身だしなみについて言えば、「自分は大丈夫」と思っていても、第三者から見れば、「なんかだらしなく見える」という場合があります。
納期で言えば、商品の納期はきちんと守っていても、「明日までに連絡する」と言ったのに、その期限までに連絡しなかったというケースがあります。
また、売上については、なんだかんだと理由をつけて目標達成が先延ばしになっている場合もあります。
そして、社長の期待する基準に達成していないから怒鳴りつけたとしても、それで状況が一気に好転するとは限りません。
では、どのように折り合いをつけたら良いのでしょうか?
一つには数字の面から冷静に判断を下すこと。
冒頭の経営者は
- 時給120円の社員が10万円の商品を1個売る→現場における多少の素行は許容範囲とする
- 時給1,000円の社員が10万円の商品を1個売る→現場におけるやり方を細かく指導する
とされました。
社員に求める基準が違っても、人件費対比で考えれば、充分に合理的だという判断です。
そして、さらに、この場合のポイントは、社員の状況に対して理解を示すということです。
つまり、時給120円の社員を厳しく指導して、勤務中はお店の中で食事をしないし、昼寝をしない、就業時間をきちんと守り、帰る際には上司に挨拶するということができたとしても、それでその社員が頑張って、商品をもう1個売ろうとはなりません。それどころか、社員教育の途中で嫌気を出して、本来売っていた1個の商品さえ売らなくなるかもしれません。
であれば、仮に昼寝の時間が30分から1時間に延びたとしても、その社員が気持ちよく働いて、もう1個商品を売ろうとしてくれたほうが、よほど生産性が上がります。
先の経営者も、その社員の状況に共感を示している訳ではありません。おそらく、日本人の感覚からすれば、インド人スタッフに対しても、「もっと、ちゃんと働いてほしい」と思っておられます。
一方で、その価値観を社員に押し付けても、事態はすぐに良くはなりません。
つまり、社長が折り合いをつけるポイントの二つ目は、相手に共感できなくても、理解しようと努めることです。
よくCool Head & Warm Heartと言われますが、社長である以上、
- 数字の面から冷静に判断を下す
- 共感できなくても、社員を理解しようと努める
という二つの要素は必須です。
会社として成長していくためには、社員の存在は必要不可欠です。
しかし、その社員に対しては、理解を示しつつも、必要以上に擦り寄らずに、必要な手を打つという、ちょっと高度な対応が鍵を握っています。
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