知恵の和ノート
自分がされて嫌なことを人にもする覚悟を持つ(第271話)
人から嫌われるのを巧みに避けて、目的を見失うのは成長が止まる会社
人からの批判をあえて受け入れて、目的を目指すのが成長し続ける会社
自分がされて嫌なことは、人にもやらない。
これは一般的によく言われている教えです。
特に人徳が高いと思われている人がおっしゃることも多いので、日々実践されている方も多いかと思います。
しかし、最近は、「自分がされて嫌なことは、人にもする」ことも、時には必要であると感じています。
弊社では、経営者とのセッションを始める際、最初にプロファイリングを行っています。その後の効果を上げるために、経営者が何を大切にしているかという価値判断の基準を明らかにするのです。
そして、
- 経営者が力を発揮できる価値判断の基準:コアコンセプトの表
- 経営者が力を発揮できない価値判断の基準:コアコンセプトの裏
を言語化します。
この後、ハッキリしてくるのは、自覚していないうちにコアコンセプトの裏を他の人にも発揮しているということです。つまり、本来であれば自分がされて嫌なことを他人にもやっているということです。
私の場合で言えば、コアコンセプトの裏は「強要」です。私自身、人から「ああやれ」「これやれ」と指示されるのは好きではありません。
この「強要」というキーワードが見つかって、私自身「サラリーマンを辞めたのはある意味必然だった」と気づいた訳ですが、その後、あまり自覚ないまま、実は人にも、いろいろと強要していたことが分かりました。例えば、仕事の際、「これはこの指示通りにやってください」という形で、自分の意向ややり方を強要していたことが多かったのです。
つまり、自分がされて嫌なことを、他の人にやっていたのです。このことに気づいてから、意識的に「この通りやれ」というような言動を控えるようにしました。
これを第一段階とすれば、今は第ニ段階です。
意識的に強要は控えるようにしたものの、仕事の中ではやはりいろいろな依頼や指示、確認をしなければなりません。
「あの件、どうなってるの?」
自分自身は言われると、嫌な言葉の一つですが、そうはいっても、こちらとしては気になるので、確認せざるをえません。
そして、あまりしつこくトレースするのは強要にあたるので、止めていたところ、いざ期日になって、社員が「あっ、忘れてました!」ということがたまにあります。
この時、自分の中では「やっぱり、朝もう一度念押しすべきだった」という自責の念が湧いてきます。つまり、自分が嫌なことを人にもやらないことを意識した結果、最終的に自分の望まない状況が生れて、今まで以上に深い自己嫌悪に陥るのです。
コアコンセプト的には裏はできるたけ避けた方が良いのですが、時には、裏だと分かっても、あえてその裏をやり通すべき時があります。
まだ、自分のコアコンセプトを知らない時には、それが裏であるということを自覚していないので、自分の中で余計な葛藤はありません。けれども、一度言葉として自覚してしまうと、「これは本来裏にあたるから、本当はやりたくないんだけどなぁ」という気持ちがどうしても湧いてきます。
しかし、経営者である以上、そこはなんとか乗り越えなくてはなりません。
そのために、私がいま実践していることは二つ。
一つは、より高い視点から考えることです。
例えば、「あの件、どうなってるの?」と聞く本人も嫌ですし、聞かれた相手側も、あまりいい気はしません。時には「あとで、ちゃんと報告しますから」と逆ギレされることもあります(汗)。
けれども、これは「お客様を喜ばせる」ためだという意識して、言い続けることです。つまり、進捗状況を確認するのは、「単に個人的な興味本位で聞いているのではなく、結果的に仕事が期限に間に合わないとお客様に迷惑をかけるので、心を鬼にして聞いている」と、自分の中で自分を納得させています。
「自分がしつこく言うのは嫌だから」というのは、自分に関心の矢印が向いています。けれども、たとえ嫌であっても、また、社員からは煙たがられても、「お客様を喜ばせるため」という視点に立てば、関心の矢印が自分ではなく、お客様に向きます。
そして、もう一つは、自分のコアコンセプトと紐付けて考えることです。
私の場合で言えば
強要は嫌だ
↓
人に強要するのも嫌だ
↓
でも、このことは「人に強要するのを避ける」ということを自分自身に強要していることを意味する
↓
自分への強要を取っ払って嫌でもあえて言う
というように、やや強引に自分の価値判断の基準と結びつけています。
なんだか禅問答のようで、よく分からないかもしれませんね。そして、自分の中でいろいろと悩んで行動したとしても、そんなことは相手には関係ないし、その真意も先方に理解されるとは限りません。
もしかすると、社員からは「自分は強要が嫌なくせに、人には強要してくるんだから!」と思われているかもしれません。
しかしながら、この段階は最初の自覚なしに強要を強いているのと少し違います。そこを分かった上での行動なので、たとえすぐには理解してもらえなくても、なんとか続けていくつもりです。
次のステージが見えてきたら、またこのコラムでも取り上げたいと思います。
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