知恵の和ノート
論功行賞と適材適所は冷徹に切り分けて対応する(第246話)
情に流されて、後々多くの問題社員を輩出するのは成長が止まる会社
非情に徹して、予め少数の問題社員を排除するのが成長し続ける会社
適材適所をどう実現するか。
経営者を悩ます経営課題の一つです。
これに関連して思い出すのは、海外に赴任していた時によく話題に上った「日本人の社長が陥りやすい失敗パターン」です。
海外で現地法人を作ったり、工場を立ち上げたりする時、英語が苦手だと、日本語ができる現地スタッフのサポートがどうしても必要になります。特に、海外赴任が初めてというトップにとっては、日本語が分かり、いろいろと助けてくれる現地スタッフの存在は頼もしい限りです。
問題は会社ができ、多くの社員を採用し、ビジネスが軌道に乗り始めた時に起こります。
立ち上げ当初にお世話になったということで、最初に雇った現地スタッフが幹部社員になることがあります。
もちろん、その人が幹部社員としての能力を発揮して、会社に貢献するのであれば問題はありません。
しかし、中にはこまごまとした雑用をこなすことは得意でも、幹部社員として、部下を統率するには荷が重いという人もいます。そして、時には社長との信頼関係を背景に、社長向けの顔と現地社員向けの顔をたくみに使い分けて、問題解決を遅らせてしまう人もいるのです。
幸い、私が赴任してた時は、お客様のところで、大きな労働問題が勃発することはありませんでした。
けれども、労働問題が発生した会社の事例を調べてみると
会社設立当初に世話になった現地スタッフをそのまま幹部社員に昇格させる
↓
社長はその幹部社員を信頼して仕事を任せていたが、実際にはその社員の管理能力等にいろいろと問題あり
↓
問題の発覚が遅れて、大きな労使問題に発展する
というケースが多かったのです。
会社として、社長として、お世話になった社員にきちんと報いるのは、とても大切なことです。
けれども、その報いる方法として、昇格や昇給以外に、役職につけて部下のマネジメントを任せる時には、細心の注意が必要です。
前述の海外現法の例で言えば、日本語がいかに得意であっても、現地社員を取りまとめる能力が高いとは限りません。また、社長の指示には迅速に従うからと言って、担当部署の仕事を部下を巻き込んで的確に実行できるとは限りません。
社長としては、自らの意を汲んで、先回りして動いてくれる社員はたいへん頼もしいものです。
けれども、全社員が社長の目の届く範囲にいて、「誰が、何を、どんなふうにやっているのか」が直接分かる状態ならあまり問題なくても、「誰が、何を、どんなふうに、やっているのか」について、社員を通してマネジメントする際は、いろいろな問題が潜在化する恐れがあります。
中小企業の場合、一発で適材適所を実現するのは、なかなか難しいという現実があります。このため、誰かを幹部社員に任命しても、その部署をその幹部社員一人に任せ切ることはかなりリスクを伴います。
- Aさんという素材のどの部分がこの仕事に適しているのか。
- Aさんという素材で適していない仕事はBさんという素材を継ぎ足せば、上手く回るのか。
- Cさんをこの場所に据えたことで、Dさんという素材を腐らせていないか。
一発でスパッとはまる状況を目指すのではなく、微調整を繰り返しながら、徐々にはまる状況を実現する。
そこには余計な情を交えずに、冷徹に人を材として見極める判断力が求められます。
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