知恵の和ノート
老舗企業の事業継続の背景には経営理念はなくても、経営者の矜持あり(第245話)
経営理念があっても、経営者に事業をやり切る覚悟がないのは成長が止まる会社
経営理念がなくても、経営者に事業を全うする矜持があるのが成長し続ける会社
「ウチには経営理念はありません」
300年以上続くある老舗企業の経営者のお話を伺った時、「どのような経営理念をお持ちですか?」という質問に対して、意外にも、「経営理念がない」という回答でした。
では、その会社に首尾一貫しているものがないかと言えば、「〇〇は儲かりそうだけれど、絶対にやらない」というように、譲れない一線があるのは話の節々から分かります。一方で、日本では売っていないけれど、海外では商社の人から、「えっ、こんなものも取扱いするんですか?」という言われるような、質の低い商品も販売されています。
お話を聞いていて感じたのは、誰もが納得するような分かりやすい表現での経営理念はないけれども、時代が変わっても、場所が違っても、絶対に事業を続けていくという強い矜持があるということです。
実際、その経営者の方は後継者の人に子供の頃から帝王教育を施されています。
そして、それは、単にマーケティングがどうとか、財務管理がどうとうかいったレベルではなく、「自分の思うように人に動いてもらうにはどうすればよいか」というような根源的な教えです。一緒に食事に行った時にも、「どうやったら、お店の人に最高のサービスをしてもらえるか」を実地で学ばせておられるとのことでした。
いくら言葉をつくし、誠意を示したとしても、残念ながら分かってもらえない人がいます。しかし、たとえ相手がこちらの真意を100%理解しなくても、会社として指示したことを一定のレベルで実践してくれたら、会社としては御の字です。
一方で、何か社員が問題を起こした時に、その社員には社内規程に沿って懲罰を与えたとしても、対外的な責任を負うのはあくまでも経営者。
結局のところ、経営者目線で仕事ができる社員を育てることはできても、経営者と同じレベルで責任を負う人は経営者だけです。
経営者と社員との間には越えられない一線があるのを踏まえた上で、何をやり、何をやらないのか。
これは経営者が自分自身で決めなければなりません。
人は他の人をコントロールすることはできません。けれども、会社経営においては、一定の決まりの下で、社員が動かない限り、ビジネスとしては成立しません。
このため、
- 経営者は社員に対して、必要以上に期待しない
けれども、
- 社員が変わっても、泰然として布石を打ち続ける
ことが、長く事業を続けていくためには求められます。
経営理念があれば事足りるという訳ではない。
単に綺麗な表現で言葉を繕うのではなく、事業を続けていくために、時には清濁併せ呑む。
長い歴史を乗り越えてきた老舗企業は、今巷で流行っている理念経営のさらに一歩先を歩んでいるのを感じた次第です。
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