知恵の和ノート
自己紹介から事実開示を経て、自己開示に昇華させる(第235話)
無理やり自己開示して、小傷を更に広げるのは成長が止まる会社
自然体で自己開示して、小傷を名誉にするのが成長し続ける会社
自分のことを開示しないと、相手はなかなか心を開いてくれません。このため、自己開示することが大事だと言われます。
この自己開示、掘り下げてみると、真の意味での自己開示と言えるには3つの段階があることに気がつきました。
その3つの段階とは
- 自己紹介
- 事実開示
- 自己開示
です。
まず最初は自己紹介。
初めての人に会った時に「ヒーズ株式会社の岩井徹朗と申します」から始まって、TPOに応じて、「どんな仕事をやっているのか」、「どんな経歴の持ち主なのか」を話します。
私の場合、今までは「銀行で働いていた」といった経歴が信頼につながったり、「楽天銀行の立ち上げに携わった」ことに対して、「すごいですねぇ!」と言っていただけることがあります。
誰に対して、どんな自己紹介をするのかについては、いろいろと工夫の余地があります。
その中で、「私は過去に営業成績で社内No.1になった!」、「クライアントさんの売上が1ヵ月で2倍になった!!」というような具体的な事実開示が行われます。
その際、いいことばっかり言っても自慢話に聞こえるので、「苦労した話も織り込んだ方がよい」と推奨されます。
そこで、「事業に失敗して借金が3億円に膨らんだ」、「社員が大量に辞めてしまって、業績が落ち込んだ」といった負の事実を織り込んで、似たような境遇にある人の共感を呼ぶことになります。
でも、人が興味あるのは、「膨らんだ3億円の借金をどうやって返済したのか」、「社員が大量に辞めた後で、どんな方法で年商100億円まで盛り返したか」ということ。このため、苦労話を事実として開示する人の大半はその苦労を既に克服できた人です。
それゆえ、いかに自分は苦労したのかを開示して、一見すると、積極的に自己開示しているように見えても、この段階での開示はあくまで自己紹介の延長線に過ぎません。
また、中には、「子供の頃に両親が離婚して苦労した」、「前の職場では上司からいじめられた」といったことをお話される方もおられます。
この場合、先の仕事での苦労話のように、すでにご本人の中で昇華されて、事実を克服されている時はいいのですが、問題はそうではないケース。
「自己開示しないとダメだ」というアドバイスを真に受けて、本来であれば、人に話したくないことまで、話をすることは傷口に塩を塗るようなものです。
過去に似たような経験で苦労したことに共感する人がいて、そこから仕事につながるかもしれません。けれども、無理して自己開示しているので、どこか心の奥底にもやもやしたものが残ります。
それゆえ、これは真の意味での自己開示ではなく、単なる事実開示です。そして、多くの場合、「自分は自己開示している」と言っている人も、実際には、この二番目の事実開示の段階に留まっていることが多いように感じます。
では、第三段階の自己開示とはどのような状態を言うのでしょうか。
私は、真の意味での自己開示を
自分の深層価値観であるコアコンセプトを踏まえた上で、過去の事実を自分の中で昇華して、自ら心底納得できた状況で他人に笑って話せること
と定義しています。
例えば、私の場合で言うと、「銀行にお勤めだったんですか、それはすごいですね」と言われた後で、「でも、途中で出世が遅れたので転職したんです」と、自ら開示していたことがあります。
これは、自分としては、「自分の恥ずかしい過去の出来事を頑張って開示した」、「銀行では出世できなかったけれど、今は独立して頑張っている」ということで納得して、話をしたつもりでした。
でも、今振り返ってみると、心の底にはどこかもやもやしたものが残っており、自己開示したというよりは、第二段階の事実開示でした。
でも、自分のコアコンセプトが「表:自然体」、「裏:強要」だと分かった後で、出世の遅れを結びつけてみると、
- 規則や上下巻関係が厳しく、「強要」の権化とも言える銀行の中で、私が出世するのは所詮無理な話である
- 出世が遅れたのは、バカな上司が優秀な私を正しく評価しなかったからではなく、コアコンセプトの裏に引っかかっていたので、やはり正当な評価である
ことが腑に落ちました。
ここまで来ると、
「出世できなかったのは、私が歩んできた人生の縮図からみれば、ごくほんの小さな通過点にすぎない」
と昇華することができ、逆に、
「出世できなかったことが恥ずかしいのではなく、自分のコアコンセプトの裏だとも知らずに人や会社を逆恨みしていた自分が恥ずかしい」
「小さなことでくよくよ悩むぐらいだったら、早めに自分のコアコンセプトを知っておいた方が人生は100倍楽ですよ」
というセールストークにもつなげることができます。
自分が他人には言いたくないことを無理して言ってもやもやを残すくらいなら、言わない方がベター。
自己開示も自然体が行うのがベストです。
★後継社長が社内外で無理なく自己開示できるようになる仕組みは「こちら」をご覧ください。
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