知恵の和ノート
当たり前がひっくり返る時代を主体的に切り開く(第199話)
常識の範囲内で、できる、できないのレッテルを貼るのは成長が止まる会社
常識の枠を広げて、やれるレベルを徐々に上げていくのが成長し続ける会社
「これって、前にも言いましたよね」
以前他社と一緒にあるプロジェクトに参加していた時のことです。
途中からそのプロジェクトに加わったメンバーのAさんに、いろいろと教えていたのですが、反応がいま一つ。少し複雑な仕事について説明した時など、理解しているのかどうか手応えが得られないので、正直すごくイライラすることがありました。
一方で、単純な作業をお願いした時など、すごい集中力を発揮されており、こちらがびっくりするほど。それこそ、「いったん休んだら」と声を掛けない限り、いつまでも作業を続けておられる感じです。
また、休憩時間などに江戸時代の文化の話になると、「えっ、そんなことも知ってるんですか!」というほど、豊富な知識をお持ちでした。
結局、そのメンバーの上司の人が「A君にはちょっと無理かも」と判断されたこともあり、Aさんは途中でそのプロジェクトから外されました。会社が違ったこともあり、Aさんとはその後お会いしていません。
そして、しばらく経った後、新聞の広告で、アスペルガー症候群に関する本が紹介されていました。
その特徴を読んでいくと、「これって、Aさんに当てはまるかも・・・」と思える部分がいくつかあり、ちょっと後味の悪さを覚えました。
Aさんご本人が本当にその症状だったかどうかは分かりません。けれども、もし、事前に私がアスペルガー症候群のことを知っていたら、Aさんに対する言い回しや対応の仕方も、もう少し変わっていたように思います。
また、私がイライラした素振りを見せたことで、知らず知らずのうちにAさんを傷つけていたのではないかと考えると、申し訳ない気持ちがこみ上げてきました。
「才能とは異常値のことです。」
弊社がコアコンセプト・マーケティングを始めるにあたって、たいへんお世話になった才能心理学協会の代表理事である北端康良先生はこうおっしゃっています。また、「けれど何が当たり前で、何が異常かは時代によって変わります。」とも。
病気なのか、正常なのか。
当たり前なのか、異常なのか。
誰しも、自らの常識に沿って判断を下します。そして、その常識が通じない相手に対しては、たいていの場合、理解することを途中で放棄してしまいます。
私は「一所懸命教えても、なかなか仕事を覚えてくれない」Aさんに対して、「仕事ができない人」というレッテルを貼っていました。しかし、それは、あくまで自分の常識が通用する範囲という、かなり小さな領域の中での判断に過ぎません。
そして、人は他人を自分の中で区分けし、分類することで、無意識のうちに自分の安心感を得ます。
今までの日本は、人々を一定の枠の中で収めることで成功してきました。けれども、昨今はその枠自体が崩れ去ったり、意味のないものになったりしています。
一億総活躍社会の実現を政府は掲げています。けれども、少子高齢化が進む日本においては、今までのような一律的な人への対応ではけっして上手くいきません。
違いを否定するのではなく、違いを個性として尊重し、それをどう活かしていくか。
これを真剣に考えない限り、活躍できる人はそうそう増えていきません。
経営者も、一人ひとりの社員の個性を活かすには、今までよりもさらに一歩踏み込んだ多面的な対応が求められています。
私も過去の反省を未来に活かしていきたいと思います。
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