知恵の和ノート
期待値を上手に調整して、会社の持続的な成長につなげる(第192話)
人やITに過大に期待し、対策を放棄するのは成長が止まる会社
人もITも冷静に判断し、真摯に対応するのが成長し続ける会社
「実は私のやっていることは『期待値を下げている』ということなんです!」
AI(人工知能)の第一人者と言われている先生のセッションに参加していた時のこと。参加者から「AIを自社の業務に使ったら、どんなことができるのか?」という質問を受けて、やり取りをしている中、最後に種明かしをしてくれました。
昨今、盛んにAIということが叫ばれています。多くの人の仕事がAIに取って替わられるという危機感をやたらとあおる論調もあれば、AIを使えば、何でもできるというかなり期待が膨らんでいるケースもあります。
仮に業務改善の観点から経営者がAIを導入しようとした場合、面倒なデータ入力作業をAIに置き換えるといった比較的単純なものもあれば、顧客対応の業務をすべてAIに対応させるといったかなり大きなことを想定している場合もあります。
AIは日々進化しつつあるとは言え、現時点でできることには限りがあります。
また、AIを活用するにはデータの蓄積が必要なので、AIを本格稼働させるためには、社内にある程度データが貯まっていて、それがきちんと整備されていることが前提条件になります。
そして、まだ発展途上にあり、日々の活動の中で学習し、進化していくという性質上、ベテラン社員のように、今日から即戦力になるという訳ではありません。
このため、現実をきちんと踏まえた上で、現時点でできることは何なのかを知って、その中で優先順位をつけることが、AIを活用するためには欠かせないというご指摘でした。
この手順をとばしてしまうと、業務効率化のために導入したのに、「かえって余計な手間ばかりかかる」という判断を下されたり、「思っていたほどの効果がでない」という結論に至ったりして、途中でプロジェクトが頓挫してしまう恐れがあるという訳です。
話を聞いていて感じたのは、「これって、社員との向き合い方と同じだ」ということです。
社員に対する期待値が大きすぎると、「なんだ、こんなこともできないのか!」とがっかりすることがあります。
新入社員であれ、中途採用であれ、採用の時には、みんな会社に入りたい気持ちが強いために、「自分はこんなことができます!」「過去にはこんな実績を上げてきました!!」というように、経営者の期待を膨らませるような言葉が並びます。特に昨今は就活のテクニックがいろいろと浸透しているため、いかにも経営者の心を揺さぶるような言葉を放つ人も増えています。
けれども、彼らが主張する「こんなこと」や「こんな実績」が必ずしもあなたの会社での成果につながるとは限りません。
優秀な学生であれば、正解のある問題に取り組むのは得意かもしれません。しかし、会社の仕事では正解は一つとは限らず、今日は正解であっても、1ヵ月後にはその正解が不正解になることもあります。
また、大手企業ではかなりの営業成績を上げていたとしても、看板もなく、予算も限られている中で、同じような営業成績を上げることができないケースもあります。
いずれにせよ、経営者に求められているのは、現時点での状況を踏まえて、冷静に判断するということ。
勝手に過大評価して、仕事を丸投げしても成果にはつながりません。また、必要以上に過小評価して、仕事を任せないのも、会社の成長にはつながりません。
そのためには、まずは社員と真正面から向き合うことがポイント。
特にAIと違って人には感情があるため、いくら論理的には正しいことでも、それで相手が納得したり、行動を変えるとは限りません。この点、社員との関係ではAIへの対応以上に、きめ細やかな対応が求められます。
AIについて学んでいる先生曰く、これからは、「経営者が『自分はITのことをよく知らないので』と言うのは、『自分は経営のことを知らないので・・・』と同じこと」なので、「ダサいです!」
そういう意味では、人数が限られている中小企業では、「経営者が『自分は社員のことをよく知らないので』と言うのは、『自分は経営のことを知らないので・・・』と同じこと」なので、「ダサいです!」
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