知恵の和ノート
コミュニケーションもちょっとした心遣いの積み重ね(第145話)
相手の事情を斟酌せず、言い放しで終わるのは成長が止まる会社
相手の事情を考慮して、一言二言を加えるのが成長し続ける会社
今からちょうど20年前、フィリピンに赴任して最初に迎えたクリスマスのシーズン。
クリスマスの1週間ほど前、マンションの警備員がニコニコしながら、いきなり白い封筒を渡してきました。
最初は何かのお知らせかと思ったのですが、封はしておらず、中味も空っぽ。渡された謎の封筒を前に、私たちは「これってなんなん?」と、頭をひねっていました。
東南アジアでは珍しく、カトリック教徒が多いフィリピンでは、クリスマスは1年の中で最大のイベントです。
「“er”になると、クリスマスシーズン到来」と言われるくらい、早くも9月(September)にはクリスマスの準備がスタート。12月にもなれば、皆がそわそわして仕事も滞りがちです。
後で先輩の赴任者に教えてもらったのですが、クリスマスの時には、マンションの管理人、警備員など日頃お世話になっている人たちに、ちょっとした心づけを渡す習慣があったのです。
つまり、先の白い封筒は「これにお金を入れてね!」という催促でした。
運転手やメイドなど直接雇用している人にはクリスマスボーナスを出すというルールは事前に知っていました。しかし、会ったら挨拶を交わす程度のお付き合いで、名前もよく知らない人にまでお金をあげるということは、念頭にはなかったのです。
結局、最初のクリスマスは何もあげなかった我々。習慣を知ってからは毎年きちんと心づけを渡すようにしましたが、しばらくの間「あの日本人はケチだなあ」と思われていたかもしれません(苦笑)。
このように海外では習慣の違いやちょっとしたコミュニケーションの行き違いによって、やってもらいたいことが上手く相手に伝わらないということがあります。
しかし、これは実際国内においても、そして、会社の中においても時々起こっていることではないでしょうか。
- 上司が指示したら、その通りやるのは当たり前だ
- 目標さえ決めれば、後は各自が工夫してやるのが仕事だ
- 質問や疑問があれば、遠慮することなく聞いてくるのが普通だ
少なくとも私の世代だと「ご説ごもっとも」で特に文句がでなかったように思います。
けれども、今だとどうでしょうか?
- 指示してもなかなか動かない
- どう工夫したらよいか分からない
- 聞きたいことがあってもなかなか聞けない
もしかすると、このような社員が多いかもしれません。
この状態、客観的に見れば、マンションの警備員から白い封筒を渡されて何もしなかった20年前の私と同じです。
残念ながら当時の警備員さんには
- なぜ彼は指示しても動かないのだろうか?
- 彼はやり方が分からないのだろうか?
- 彼はどこでつまづいているのだろうか?
と考えて一歩踏み込む行動がありませんでした。
そして、もし、封筒を渡す時に「クリスマスなので、これにお金を入れてね!」と一言添えていれば、最初の年からお金をもらえていたはずです。
たとえ、社員があなたの思い通りに行動しなくても、彼もしくは彼女にそんなに悪気がないことがあります。また、時には指示された内容が良く理解できずに戸惑って何も行動できていないということもあります。
ちょっとしたことが重なると、意思の疎通が上手くいきません。しかし、逆にちょっとした心遣いを積み重ねれば、ミスコミュニケーションを防ぐことができます。
社員が経営者の思う通りに動かないのは当たり前。
そんな時代にマネジメントする際には、相手は初めて異国に来て、何も知らない異邦人と思うぐらいの心構えが必要です。
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