知恵の和ノート

2016/11/01

人の意欲が成否の分かれ目(第139話)

カテゴリー :ビジネスモデル

形式的な基準で判断し、意欲をそぐのは成長が止まる会社
形式的な基準に加えて、意欲を汲むのが成長し続ける会社

人の意欲が成否の分かれ目

「弊社は不良債権がほとんどないんですよ」

東証一部上場企業の某ノンバンクの方とお話していた時のことです。

不動産担保融資を専門とするその会社では、

  • 決算書の内容があまりよくない
  • 税金を滞納している
  • 銀行からの借入金をリスケしている

といったように、通常ではなかなか銀行から新規融資がでない先にもお金を貸しています。

融資の条件としては不動産担保がいるのですが、言い方をかえれば、担保の評価範囲であれば、お金を貸すというスタンスです。

「担保をとっているのだから、不良債権が少ないのは当たり前ではないか?」と思われるかもしれません。しかし、私も昔銀行にいたので、よく分かりますが、担保をとっているからといって不良債権にならないとは限りません。

担保評価が甘い時など、いわゆる担保評価割れが発生します。そして、実際に融資が不良債権となって徴求していた不動産を競売にかけたりすると、市場価格よりも低い金額でしか回収できなかったりします。

この点、冒頭のノンバンクでは不動産担保融資専門でやってきたために、独自のノウハウが蓄積しており、融資金額が担保評価を下回ることはほとんどない模様です。

そして、仮に融資を受けても業績が回復せず、担保物件を売却して融資を返済する場合も、競売にかけることはめったになく、借主が任意売却で返済することが多いため、回収率が高くなっているとのことでした。

このように、会社独自の不動産担保評価が不良債権が少ない要因であることは事実です。

しかし、それだけでは、「なぜお堅いと言われている銀行が融資しない先にお金を貸しても大丈夫なのか?」という説明にはやや物足りない気がします。

そして、打合せの中で分かった理由の一つは、​​​​​​​借り手側の姿勢です。

当然ながら、ノンバンクからの借入は銀行からの借入金よりも金利が高いです。このため、業績が悪化している中、銀行から借入できずに、高利のノンバンクに手を出して金利負担が重くなり、借入金が雪だるま的に増えるというのはよくあるパターンです。

しかし、いろいろとお話を聞いてみると、先のノンバンクの場合、​​​​​​​銀行はお金を貸してくれないが、会社を再建したい意欲はあるというお客様が圧倒的に多いのです。

つまり、

会社を再建するには新たなお金がいるが、そのお金を調達する手段がなくて困っている
 ↓
本来であれば、高利のノンバンクから借入したくはないが、会社の現状では一時的な措置としてやむをえない
 ↓
借入したお金を基に一日でも早く業績を回復させ、また銀行とも通常に取引できるようにしたい

というケースです。

ノンバンクの場合、担保評価が中心なので、事業計画など将来のキャッシュフローの見込などは補足的な位置づけです。しかし、結果的には「会社をなんとかしたい」という意欲が強い経営者からのお申込みが多いことが、不良債権の低さにつながっていることが分かりました。

これは、ノンバンク側として意図したものではありません。しかし、銀行は融資してくれないが、お金があれば会社の再建はできるというニーズとうまくマッチしています。

最後は人を見て貸す。銀行の時に最初に教わったことですが、今の銀行ではなかなか実践できていません。

担保評価中心のノンバンクが、逆説的にお金を返せる人を見出しているのはなんだか皮肉な感じがします。

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