知恵の和ノート
あうんの感覚を磨いて、価値を高める(第127話)
マニュアルがサービスの上限となるのは成長が止まる会社
マニュアルをサービスの下限とするのが成長し続ける会社
「ちょっと確認してきます!」
先日お客様ととあるイタリアンレストランでランチミーティングをしていた時のこと。別の打合せを終えて、弊社の取締役が途中から合流しました。
既にランチを済ませていた取締役が飲み物を注文したところ、「ランチタイムは飲み物だけはやっていないので」と言われたのです。お店側の事情からすると、混雑するランチの時に、単価の低い飲み物だけで長く粘られては困るというのはよく分かります。
しかし、その時は既に2時近くでランチのピークは過ぎており、新たに入ってくるお客さんはほとんどおらず、店内も空席が目立ちます。「でも、すでにお昼は食べてきちゃったので」と言ったところ、店員さんが店長に確認に行って「今回だけは特別にOKです」と言われました。
そのお店の場合、ランチの時は飲み物だけの注文はダメというルールがあることを知らなかった点ではこちらにも落ち度があります。また、店員さんは単にお店のルールを守ろうとしただけなので、彼女を責めるつもりはありません。
けれども、・・・・・。
実はその後何日かしてから元スターバックスの社長だった岩田松雄さんのお話を聞く機会がありました。その中で印象に残っているエピソードの一つがスターバックスの二子玉川店の店員さんの話です。
ある時岩田社長はお客様からお礼の手紙をもらいました。
そのお客様の娘さんが心臓の手術で渡米する前、大好きなスターバックスで自分の好きな飲み物を飲みたいという希望がありました。でも、彼女の希望を叶えるにはどうしても営業時間外の朝早くお店をオープンさせる必要がありました。
「たぶん無理だろう」と思って、店員さんに頼んだところ、その店員さんは「いいですよ、では〇〇時に来て下さい」と快諾。彼女一人のために時間外にお店を開けて彼女の好きなドリンクを作って上げたそうです。
その娘さんは手術は成功したものの、お亡くなりになりました。そして、娘さんがスターバックスの店員さんの対応にすごく喜んでいたのを受けて、お父さんからお礼の手紙が届いたのです。
岩田社長はこのことにいたく感激し、好事例として社内で発表したそうです。
もちろん、営業時間外に勝手にお店を開けるというのは会社側からすれば、ルール違反です。全店でこれをやり出すと収拾がつかなくなるので、経営者としてはこれを積極的に奨励する訳にはいきません。
でも、時と場合によっては「お客様のためになる」という観点から、会社のルールを破ることもあってしかるべきことです。このあたりは微妙なニュアンスであり、どこまではOKで、どこからはダメというのを厳密に線引きするのは難しいかもしれません。
けれども、アルバイトを含め社員が「ここまではやっても会社は認めてくれる」と分かっている会社は強いです。
ランチタイムの対応の件で店長に確認にいったイタリアンレストランの店員さんと営業時間外にお店を開けたスターバックスの店員さん。
おそらくお二人の素質や能力にそれほど大きな違いがあるとは思えません。けれども、次にどちらのお店に行きたいかと聞かれたら、自ずと答えは決まってきます。
あうんの呼吸というのは基準がない分、とても難しいことです。
しかし、あうんの呼吸で全社員が自立的に動けるようになると、とてつもない価値を生むようになります。
それを定着させるには良い事例をたくさん社内で共有することが必要です。
マニュアルを作るだけでは仕事は回りません。ミッションやビジョンをお題目のように唱えているだけでは社員は動きません。
あなたが、社内で共有したいことはどんなことでしょうか。
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