知恵の和ノート
浅いレベルのUSPなんて要らない(第114話)
浅いレベルの差異で右往左往するのは成長が止まる会社
深いレベルの源泉で日々邁進するのが成長し続ける会社
「熱々で、ジューシーなおいしいピザをお宅まで30分以内にお届けします。間に合わなければ、代金は頂きません。」
USP(Unique Selling Proposition)の説明としてよく使われるドミノピザの事例です。
USPは独自の売り・強みと訳され、マーケティングを勉強すると、「あなたのUSPをハッキリさせましょう!」ということを必ず言われます。
でも、長年会社経営をやっている方なら、すぐお分かりのように、いくら独自の売りを前面に押し出したとしてもすぐに真似されます。特に「これは売れる」と思った特徴などは遅かれ早かれ他社が取り入れてきます。
もちろん、「30分以内に届けられなければ無料」という特徴を維持するためには、会社の業務フローをしっかりと整備する必要があります。このため、その特徴を続けられる仕組みがあることは先行者の強みでもあります。
けれども、多くのユーザーはなかなか違いが分かりません。ドミノピザが「30分以内」ならウチは「15分以内だ!」という会社が出てくれば、独自の売りは売りではなくなります。
特に中小企業VS大手企業の構図で考えた場合、中小企業がせっかく苦労してUSPをアピールしても、大手企業が本気で取り組み始めたら、やがて市場を奪われてしまうのは明らかです。
だから、多くの経営者はライバル企業が似たような商品を売り出した時に、「いや、ウチは『ここ』が違うんです!」と違いを必死になってアピールすることになります。
しかし、競合が増えてきた時に会社側が打ち出す特徴の違いは、お客さんから見れば五十歩百歩。このため、会社が必死で考えた特徴もあまり効果がなく、結局は価格競争に巻き込まれてしまいます。
では、中小企業はどうすればよいでしょうか。
最近弊社ではUSPよりももっと深い源泉のところを掘り下げています。
営業の得意なA社長。
A社長と営業の話をすると、必ず出てくるのが、「お客さんの目をよく見て感じることが大事」というフレーズです。
このような教えは営業関連の本を読めば、「お客さんが言葉にしていることではなく、言葉にしていないこともしっかり汲み取りましょう」といったノウハウとして出ています。このため、「お客さんの目をよく見て感じることが大事」と言っている経営者は他にもおられるのではないかと思います。
しかし、ある時、A社長から「自分は劣等感の塊なんです」というお話をお聞きしました。普段明るくて元気なA社長からそんなことは微塵も感じられないので、すごくびっくりしました。
実はA社長、幼い頃、ご両親が離婚され、母親に育てられました。今でこそシングルマザーは珍しくありませんが、当時は「どうしてウチだけ違うんだろう」と、すごく悩んだそうです。
学校のクラス名簿の保護者の欄に普通は父親の名前が書かれているのに、自分のところだけ母親の名前が書いてある。友達の家に遊びに行くと、お母さんがおやつを出してくれるのに、家に戻ると、自分はいつも一人ぼっち。このため、少年だったA社長は「自分のせいで両親が離婚してしまった」「自分なんて生まれてこなければよかった」と思うようになりました。
そして、そんな劣等感を抱いていると、気になるのは人の顔色です。
「この人は自分を嫌いなのでは?」
「この人は何を考えているんだろう?」
「今の言葉ってどういう意味なんだろう?」
というのを深く考えるようになっていきました。
この話を聞いた時に、私が感じたことは、「だから、Aさんは『お客さんの目をよく見て』としきりに言うんだ」ということです。
つまり、A社長は
子供の頃から持っていた劣等感
↓
人の顔色をうかがう癖
↓
顔色から人の気持ちを読み取る
というつながりがあるので、結果として営業が得意になったのです。そして、自分が弱みだと思っていたものが、焦点を変えると、強力な自分の強みになります。
こう考えると、他の人が言うのと、A社長が言うのとでは、「お客さんの目をよく見て感じることが大事」という言葉の重みがまったく違います。
すると、たとえ同じことを言っても、相手に対する言葉の圧力が違うのです。そして、この違いはスーパーオリジナルなもので他社が絶対に真似できない部分です。
だから、中小企業が特徴を出すには単に「30分以内に届けられなければ無料」だけではまだ浅いです。
なぜ、「30分以内に届けられなければ無料」なのかのより深い源泉まで掘り下げる必要があります。
もし、その源泉がハッキリすれば、たとえ「15分以内に届けられなければ無料」というサービスをライバル会社が打ち出してきても、また、仮に「30分以内」が「45分以内」に変わっても、一定のお客様は必ずあなたを支持してくれます。
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