知恵の和ノート
常識を打ち破ってお金と時間を節約する(第93話)
常識の範囲内でやり方に工夫を加えるのは成長が止まる会社
常識を超える発想で余計な手間を省くのが成長し続ける会社
乗客の転落事故を防ぐホームドア。
最初は新幹線などでしか見かけませんでしたが、最近ではいろいろな駅でも見かけるようになりました。
設置がなかなか進んでいない鉄道会社で共通している問題は電車の扉の数。4ドアに統一されている場合は問題ないのですが、中には4ドアと3ドアの両方の電車がある場合や10両編成の一部だけ5ドアや6ドアがある場合などはやっかいです。
混雑の激しい山手線でホームドアの設置がなかなか進まなかった理由の一つは、編成の1部に5ドアの車両が混じっていたためでした。このため、山手線では5ドアの電車を4ドアに改造した後、ようやくホームドアの設置が進むようになったのです。
この点、東急電鉄では従来と違った発想でホームドアの設置を予定よりも早めに始めました。
どんな方法だと思われるでしょうか?
実は東急電鉄でも4ドアの電車と6ドアの電車が混在していました。山手線と同じ発想で考えれば、「6ドアの電車を4ドアに改造する→4ドアに合わせたホームドアを設置する」というステップを踏むことになります。この場合、車両の改造が済むまでホームドアを設置できませんし、当然のことながら車両の改造費用がかかります。
従来の発想では、ホームドアと電車のドアの数を合わせるというのが大前提です。これは転落事故防止という観点から考えても当然と言えば当然です。でも、東急電鉄では、あえてホームドアと電車のドアの数を合わせるという前提を捨てました。つまり、6ドア車両が停車する位置でもホームドアの数は4ドアにしたのです。
この時、この位置に電車が停まった時には、ドアの数がずれているために、ホームドアの目の前に電車のドアがないという状況が生まれます。しかし、東急電鉄では、ホームドアの位置を通常よりもホーム側に寄せるというアイデアでクリアしました。
普通ホームドアはプラットホームの端っこに設置されているので、「乗客はホームドアが開いたら目の前にある電車のドアから乗車する」という流れになります。一方、東急電鉄では「ホームドアの目の前に電車のドアがない場合は、ホームドアと電車の間にあるスペースを通って斜め前にあるドアから電車に乗車する」という流れがあるという訳です。
言われてみれば、「えっ、そんなこと?」と思われるかもしれません。設置する位置を少し変えただけで、何か画期的な新技術を開発したのではありません。また、この方式ではホームドアの位置が通常よりも内側にあるため、プラットホームの幅が狭い駅では電車を待っているスペースが狭くなるという欠点もあります。
でも、この方式は、ホームドアと電車のドアの数を合わせなければいけないという従来の常識を打ち破った点でかなり画期的です。そして、結果的には6ドア車を4ドア車に改造するお金と時間を節約した点では大いに評価されるべきだと私は思います。
あなたの会社の業界でも常識として「ホームドアと電車のドアの数を合わせなければいけない」という類のものはいくつかあるかと思います。そして、その常識を守るために多くの時間とたくさんのお金を使っていることもあるのではないでしょうか。
でも、ちょっとした発想の転換でその時間とお金を節約できることもあります。
コロンブスの卵に続く東急電鉄のホームドア。
あなたの会社でも常識に囚われない発想で、ぜひ何か新しい発見をしていただければと思います。
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