知恵の和ノート
時間を分類して将来への布石を打つ(第83話)
目先の利益に集中して将来に禍根を残すのは成長が止まる会社
将来の利益に着目して目先の時間を使うのが成長し続ける会社
バブルの時期、私が勤めていた銀行でも業務本部制がしかれ、融資案件の可否をチェックする審査部がその本部の中に組み込まれました。
「お金をドンドン貸せ」という大号令の下、融資を伸ばす部門とそれをチェックする部門があった場合、当然のことながら前者が力を持ちます。その結果、多くの不良債権が生まれる事態になりました。
現在から振り返るとごく当たり前の帰結のように見えますが、ではなぜ当時は各銀行がこぞって業務本部制を採用したのでしょうか。
組織を一体化することで早まるのはスピード。お金を貸して収益を上げるためには他社に先駆けて融資案件に対応することが求められました。それが「お客様のため」だと考えられていたのです。
多くの企業では会社の組織や機能を分類する際に「お客様のため」という論理を持ち出します。しかし、この「お客様のため」というのはかなり曲者です。
一見すると美しい言葉ですが、「自社の利益を追求するため」ということを覆い隠すために使われることがあります。銀行のケースで言えば、「貸すも親切、貸さぬも親切」という銀行の本来果たすべき役割を軽視して短期的に収益を上げることに集中したために、後に大きなダメージを負うことになりました。
会社の組織や機能を分類する際には、短期的な収益を着実に上げることと長期的な収益を確保することのバランスをよく考える必要があります。
お客様の顕在化しているニーズにアプローチして利益を確保するのは比較的簡単です。一方で、長期的な収益を確保する仕事の場合、潜在化しているニーズを掘り起こすため、当面は華々しい成果が出ないことが少なくありません。
でも、それを将来への布石だと考えてじっくり取り込めるかどうか。
人間忙しいと、ついつい目先の短期的な収益を上げることに時間と労力を使ってしまいます。このため、最低でも月に1回、できれば週に1日、長期的な収益を確保するために時間と労力を使うことが必要です。
中小企業の場合、組織や機能を分類して将来に向けて布石を打つための部門を作るのはなかなか簡単ではありません。
その場合は、意識的に時間を分類して、「毎月10日の午後、3時間だけは将来に向けてのために時間を使う」と決めることをお薦めします。そして、最初に決めた10日が商談等で都合が悪くなった場合は「翌日の午後に振替える」という代替案のルールも最初から決めておく方がベターです。
長期的な収益を確保するためには小手先ではダメ。
本質的なところに立ち返って
「今のやり方で本当に良いのだろうか?」
「どこかでちょっと妥協している点はないだろうか?」
「もっとやるべきことがあるでは?」
とじっくり考えてみましょう。
「お客様のため」と言いつつ、実は「自社の目先の利益のため」やっていることが少なからず見つかります。
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