知恵の和ノート
サンダーバードに学ぶリスクコントロール(第71話)
成長し続ける会社は正確でタイムリーな情報を基に経営者が果敢に決断して結果を残す
リスクコントロールのポイントが凝縮
ある夏の日、お台場の日本科学未来館で開催されていたサンダーバード博へ行ってきました。
子供の頃に夢中になった国際救助隊サンダーバード。1965年に制作された人形劇で、100年後の2065年を舞台にしています。日本でも1966年に最初に放送されて以降何回か再放送されているので、一度はご覧になった方も多いのではないでしょうか。私もサンダーバード1号や2号が発進するシーンには毎回心を躍らせていました。
そのサンダーバード、様々な危機から人命救助にあたりますが、パターンはいつも一緒です。
災害等が起きてSOSが発信される
↓
宇宙ステーションであるサンダーバード5号でその情報をキャッチ
↓
本部に知らせて出動決定
↓
サンダーバード1号がいち早く現場にかけつけて現状把握
↓
救助メカを搭載したサンダーバード2号が到着してから救助開始
サンダーバード博は、最先端の科学技術からサンダーバードを検証するという視点に立っています。一方、サンダーバードはリスクコントロールの観点からもいろいろと学びがあります。
迅速な情報伝達はリスクコントロールの起点
「どうした?ジョン」
国際救助隊が活躍するサンダーバード。
事件や事故に対する第一報は宇宙ステーションであるサンダーバード5号からもたらされます。世界各国で行き交うあらゆる電波を受信。正式に出動要請があった場合だけでなく、事故現場から発信されている情報も入手して本部に伝えます。
そして、本部で最初に情報を受取るのがサンダーバードの生みの親で隊長のジェフ・トレーシー。部屋の壁には5人兄弟の写真が飾ってあり、連絡が入ると、音とともに写真の目が光り、会話が始まります。
その第一声が冒頭のセリフです。
さて、リスク管理で大切なのは、スピードです。特に迅速な情報伝達はリスクを最小限に抑えるために欠かせません。危機が起こった時に問題を大きくしているのは、たいてい第一報が伝わるのが遅れたというケースです。
遅れる要因は大きく分けると二つあります。
一つは、そもそも情報を入手する仕組みが弱いということ。
もう一つは、入手した情報がトップに伝わる仕組みができていないということです。
社内にアンテナがない、あってもアンテナの受信能力が弱いと問題は放置されたままです。また、せっかく情報が上がってきても「これは社長の耳に入れるとまずい」ということで、情報が経営者に伝わらないということがあります。すると、謝罪会見で社長が「私は知らなかった・・・」となって袋叩きにあいます。
この点、サンダーバードでは、サンダーバード5号で些細な情報でも入手できるシステムを構築していることに加えて、第一報が直接トップであるジェフ・トレーシーに伝わる仕組みになっています。
人命救助では1分1秒の違いが生死の分かれ目。
一方、会社のリスク管理では、1分1秒までは争わないにしても、「対応がもう1日早ければ大問題にならずに済んだのに」ということが多いのです。
あなたの会社の中に
- 些細な情報でもきちんと入手できる仕組みがあるのか
- 入手した情報がすばやく経営者に伝わる仕組みが確立されているか
定期的に確認しましょう。
正確な現状把握と的確な指示でリスクコントロールする
リスク管理で大切なのはスピードですが、国際救助隊サンダーバードの中で真っ先に現場にかけつけるのがサンダーバード1号です。
その売りは、地球上のあらゆる場所に60分以内に到達できるという点なので、かなりのスピードです!そして、いち早く現場に駆けつけたサンダーバード1号は、移動指令室として正確な現状把握と的確な指示に威力を発揮します。
1号を操縦するスコットは、人手が足りない時には自ら救助活動に参加することもあります。しかし、彼の本来の役割は、現場の指揮官として、関係者からの情報収集、救助隊員への指示を行うことなのです。
ところで、社内で問題が起きた時も、現場はかなり混乱しているため、正確な情報が伝わらないということがあります。一方で、本部と現場では温度差があるので、本部がトンチンカンな指示を出してかえって現場の混乱を招くということも少なくありません。
この点、サンダーバードでは、
- 可及的すみやかに現場にかけつける
- 第三者の立場で正確な情報を収集する
- 問題解決に対して最適な指示を出す
という役割を1号が担っています。
常に60分以内に現場にかけつけるのは物理的に無理にしても、できるだけ早く正確に現状を把握し、沈着冷静な立場から的確な指示を出すというのはリスク対応の基本です。
スコットが現場に到着した際によく言うセリフは、「大丈夫。我々がなんとかします!」
あなたの会社にサンダーバード1号の役割を果たす人はおられるでしょうか?
日頃の準備を万全にしてリスクコントロールする
国際救助隊サンダーバードでは
災害等が起きてSOSが発信される
↓
宇宙ステーションであるサンダーバード5号でその情報をキャッチ
↓
本部に知らせて出動決定
↓
サンダーバード1号がいち早く現場にかけつけて現状把握
↓
救助メカを搭載したサンダーバード2号が到着してから救助開始
とパターンが決まっています。
そして、リスク管理で大切なのは、スピードという観点からすると、5号が迅速に情報伝達、1号が現場に急行することがポイントでした。しかし、実際の救助活動で活躍するのは、サンダーバード2号です。このため、1~5号ある中で一番人気は、サンダーバード2号なのです。
ところで、問題解決に至るパターンは同じですが、実際に起きる問題は毎回異なります。
ビルが大火災になった時もあれば、地下に人が閉じ込められた時、船が沈んでしまった時など毎回ハラハラドキドキの連続です。そして、地中を掘り進む時はジェットモグラを搭載し、水中の事故の際にはサンダーバード4号を搭載して現場に向かいます。
つまり、サンダーバードではその都度ごと異なるメカを搭載して人命救助にあたる訳です。
当然のことですが、事故が起きてから救助にあたるメカを作っていたのでは絶対に間に合いません。
すなわち、万が一に備えて予め準備をしているからこそ、現場に到着したスコットが「大丈夫。我々がなんとかします!」と言い切れるのです。
会社においても実際に起きる問題は様々です。そして、問題が起きてから初めて解決策を立てるのでは問題がどんどん大きくなります。
このため、問題をすばやく解決できるかどうかは毎日どんな準備をしているかにかかっています。つまり、スピード解決の鍵は日頃の準備が握っているのです。
理想的なオーナー社長の下でリスクコントロールする
国際救助隊サンダーバードの隊長はジェフ・トレーシー。サンダーバードの創設者です。
そのキャリアを簡単にご紹介すると
アメリカ空軍大佐、宇宙飛行士として活躍
↓
妻の死をきっかけに5人の息子を育てるため、そのキャリアを捨てる
↓
建設会社を設立して成功し、世界的な大富豪になる
↓
その資産をもとにサンダーバードを創設
となります。
サンダーバードを会社としてみた場合、ジェフ・トレーシーは、「創業者+オーナー+社長」。いわば、ワンマン社長です。
ワンマン社長と言うと、良い面、悪い面の両方がありますが、ジェフの場合は良い面が前面に出ています。
まず、決断が早い。
事件や事故の情報をキャッチすると、すぐさま出動を決定しています。
次に、指示命令が徹底しています。
実際、「すぐに出動だ!」の一言に対して、社員は「はい、パパ」と誰も文句を言いません(笑)。
一方で、組織の維持運営には細かいところまで気を使っています。
サンダーバードは秘密組織であるという位置づけにあるため、その存在を知られてはいけないということが全編にわたって徹底されています。
このため、情報管理の徹底が組織運営のポイントの一つです。
ある回では、サンダーバード2号が誤って迎撃され、大事故を起こしたという事件が起きました。大規模な修理が必要になったのですが、ジェフは、部品の発注先をいろいろなところに分散しました。つまり、それだけでは何を作っているのか分からないよう配慮したのです。
情報管理に関する社内のリスクコントロールを自らも率先垂範していますね。
ジェフは直接救助活動にあたりません。
けれども、人命救助というミッションを社員に徹底させ、すばやい決断で問題解決にあたり、情報漏洩には細心の注意は払うなど、攻守両面にわたって理想的なオーナー社長です。
会社は経営者次第であると言われますが、サンダーバードにおいてもしかりです。
リスクコントロールのポイントのまとめ
ポイントをまとめると、国際救助隊サンダーバードが毎回人命救助で活躍できるのは、次の要素が備わっているからです。
- 些細な情報でもきちんと入手して、すばやく経営者に伝える
- 正確に現状を把握し、的確な指示を出す
- 万が一に備えて、日頃の準備をしっかり行う
- 決断が早く、指示命令が徹底し、自ら率先垂範するという経営者の資質
これらの要素は人命救助に限らず、日頃会社が経営を続けていくためにはどれも欠かせない要素ではないでしょうか
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