知恵の和ノート
外部の経営資源を取り込んで自社の成長につなげる(第58話)
頑なに社内の自前主義にこだわるのは脆い会社
柔軟に外部の経営資源を活用するのが強い会社
私が成長支援部作りコンサルティングを始めるにあたってたいへんお世話になった五藤万晶先生から、新著である「優れた社長は、コンサルタントをどう使うのか?」を贈っていただきました。
私は五藤先生の最初の著作「コンサルタントのためのキラーコンテンツで稼ぐ法」を読んで先生の存在を知っていろいろと教えていただきました。前作がコンサルタントはどうあるべきかという点でたいへん勉強になったのですが、今回はコンサルタントをどう使うべきかという点でたいへん参考になりました。
私が初めてコンサルタントという職業の人と一緒に仕事をしたのは、今から15年前、ちょうど楽天銀行の立上げをやっている時でした。
そのコンサルタントはいわゆるIPOコンサルタント。当時会社は最初からIPO(株式公開)を目指すといううたい文句だったので、そのご指導を受けたのです。
「まずはこの議事録を作って下さい」
「今月中に規程を揃えて下さい」
「月次決算は10日以内に締まらないとダメです」
次々に出される指示に対して「えっ、そうなんですか???」とかなり戸惑いを覚えました。
なぜなら、その頃はまだ社員が18名の小所帯。最低限の社内規程やルールはあったものの、社内体制としては、まだ海のものとも山のものとも分からない混沌とした状態でした。
いきなり小学生に向かって、「大学入試ではここが大事だからしっかりやるように!」と言われているようなもので、九九をやっと覚えたばかりの子供にいきなり微分積分の問題を解かせている感じがしたのです。
もちろん、仕事は目標から逆算して考えるべきです。
でも、いくら逆算して本来やるべきことが分かったとしても、実際にその仕事をやる人の能力や置かれた状況を正しく理解した上で、手順を踏んで「まずは何をやるのか」を決めなければいけません。
これらのステップをとばして「いいから言われた通りにやれ!」では、たいていの場合、二度手間、三度手間になります。
私がお会いしたIPOコンサルの人も教科書的には正しいことを言っていたのかもしれません。でも、少なくとも私が入社して間もない頃の会社にとっては、必ずしも正しいとは言えないコンサルティングでした。
このため、IPOコンサルタントに言われて拙速で作った書類は、そのうちお蔵入りになり、そのうち、そのコンサルタントも会社では見かけなくなりました・・・。
このようにコンサルタントを使って上手くいかなかった経験は、あなたの会社でも一度や二度はあるかもしれませんね。
優秀なコンサルタントの見分け方については、五藤先生の本を読んでいただくとして、私が最近感じるのは、コンサルタントなど外部の経営資源を使えるかどうかで、長期的には会社の成長に差が出てくるということです。
先日も個別相談のご依頼のあったお客さんが、「契約前にコンサルティング会社が言っていたことはすごくデタラメだった!」とかなり怒っておられました。
ある許認可事業を始めるにあたってコンサルティング契約を結んだのですが、結果的にそのコンサルはほとんど役に立たなかったそうです。そして、最後は経営者が自力で頑張って新規事業を始める羽目に陥ったそうです。内容を詳しくお聞きすると、確かに「それはちょっとひどいですね」というものでした。
つまり、短期的な費用対効果としては問題ありの事業投資だったのです。
けれども、もう少し長期的な観点に立つと
- ゼロから自力でやった場合と比べると、時間はかなり短縮できた
- 次に事業投資する際に上手くいかなくなる時の判断基準ができた
- たとえ失敗しても最後はなんとか巻き返せるという自信ができた
というようにいろいろな波及効果も生まれています。
私の楽天銀行時代の経験もそれ単体で見れば、上手くコンサルタントを活用できなかった事例です。でも、苦い経験を積めば人は必ず学んで成長します。
少なくとも私は受けたアドバイスに対して、「えっ、そうなんですか???」と納得のいかない時は腹に落ちるまで質問をぶつけるようになりました。
これからは好むと好まざるとを問わず、全部を自前で社員がやるのは難しい状況になってきます。特に中小企業の場合、人材確保という点では大きく環境が好転するとはなかなか思えません。
一方で、ITの発達もあってクラウドソーシングのように、外部の経営資源を有効活用できるチャンスはどんどん広がっています。
だからこそ、中小企業こそ、自前主義からいち早く脱却し、外部の経営資源を取り入れることで、たとえ少人数でも仕事が回る体制を構築すべきです。
中小企業を定義する際の要素は資本金の額と従業員数の二つ。
財務的には資本金が大きいことに越したことはありません。でも、単に従業員数が少ない自体は仕事のやり方次第では、必ずしもデメリットでなくなりつつあります。
「ウチは人材がいなくて」と嘆く前にできることは山ほどあります。
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