知恵の和ノート
バランスを崩し続けて高い次元でのバランスを目指す(第57話)
安定した状態で保守派が生まれるのは脆い会社
安定した状態で革新派が増えるのが強い会社
私が今の楽天銀行の設立準備会社に転職する際、面接のため3回ほど会社に行きました。
その間、期間にすれば約1ヵ月。驚いたことの一つが、毎回行くたびにオフィスのレイアウトが変わっているということでした。創業から間もなく、積極的に人を採用している時だったので、社員の増加につれて机や椅子、部屋の配置もいろいろと変わっていったのだと思います。
それまで働いていた銀行では、オフィスのレイアウトは、そんなにしょっちゅう変わるものではありません。このため、面接のたびにオフィスの雰囲気が変わる状況に触れて、「なんだか躍動感があるなぁ」と感じたのを覚えています。
このように、社員が増えている時期は自然と変化が生まれます。
そして、変化があれば刺激になります。
そこで、最近ではフリーアドレス制を採用して、毎日自分の机と椅子が変わるという会社もあります。
いったん自分の居場所が決まると、だんだんとそれに馴染んできて、やがて他へ移るのが億劫になってきます。いわゆる安定の時期です。
もちろん安定すること自体はけっして悪いことではありません。
しかし、安定していると、
- どうしても発想が偏る
- 新しいことに挑戦しづらくなる
- 既得権益を守ろうとする
というデメリットも出てきます。
さて、どうやって安定のデメリットを減らすかというのは何もオフィスのレイアウトに限ったことではありません。
人間の脳は基本的には保守的で変化を嫌います。
一方で、今や外部環境が大きくかつ急速に変わっていく時代。
外部環境が変化しているのに、人が変わらないままでいると、気がついたら大きく時代から取り残されていたということにもなりかねません。
先日もご相談を受けたお客様の話を聞くと
・商品に対する人の価値観が大きく変わっている
・異業種からの参入が増えている
・インターネットの普及で価格競争が激化している
・入札のやり方が変わったので、受注機会が減った
・社員の高齢化が進んでいる
というようなお悩みを話されていました。
かつては上手くバランスしていたものが、そのバランスが少しずつ崩れて、今までのように安定した売上を上げ、利益を確保するのが難しくなっている状況です。
このようにいったんバランスが崩されてしまうと、好むと好まざるに関わらず、今までのやり方を変えたり、新しいことにも挑戦しなければならない状態に追い込まれます。
一方で、売上が好調、過去最高の利益を更新したという状況の下で、今までのやり方を変える、あえて新しいことにチャレンジするというのはかなり勇気のいることです。
しかしながら、好調な売上も単に円安の影響が大きいからかもしれません。また、過去最高の利益更新もたまたま新商品が大ヒットしたお蔭かもしれません。
円安がまた円高に振れたら売上はどうなるのか?
ライバル会社が競合商品を開発したら利益はどうなるか?
400年以上続く羊羹の虎屋さんは毎年微妙に味を変えています。
成長とは常に変化し続けること。
バランスが崩される前にあえて自ら崩す。
勇気を持って柔軟に自らのバランスを崩し続ける会社のみが、より高い次元でのバランスを達成できます。
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