知恵の和ノート
多面的な視点を取り入れる(第51話)
自分の視点だけを信じるのは半人前の社長
多面的な視点も取り込むのが一人前の社長
中小企業の場合、社長は会社の経営者という側面と会社の利益の源泉という側面があります。
経営者という側面は大手企業の社長と同じく、どういう経営方針を作ってどんな経営判断をするのかがポイントになります。
一方、人材が限られているので、どうしても、プレイヤーとして動くことが必要です。
つまり、単に社長室で椅子に座って踏ん反りかえっている訳にもいかず、時には営業の先頭に立ち、時には技術開発に没頭しなければなりません。
そして、社内で一番優秀な社員である社長が、経営者として働く場面と一番会社にとって利益につながる仕事に携わる場面が増えれば増えるほど会社は安定していきます。
このため、私が社長さんと初めてお会いする時には、次の6つをお伺いするようにしています。
- S:Speed
- Y:Yield
- A:Action
- C:Cash
- H:Human
- O:Organization
スピードとは今よりも会社が「より速く成長するためには何が必要か?」ということです。
Yieldとは(利益等を)産み出すという意味。つまり、「社長が何をやれば一番効果が高いか?」を探ります。
中小企業の場合、頭では分かっていても、なかかなか行動できない、実行に移せないということがあります。そこで、「行動を進めるためにまず何をするのか?」がポイントになります。
また、言うまでもなくお金。ここでは、会社が自分の意思で自由に使えるお金である「フリー・キャッシュフローはいくらか?」を把握します。
そして、人と組織。社員だけなく社外協力者も含めた人と、社内の組織だけでなく社外のリソースを含めた組織体がどうなっているのかを確認するのです。
もちろん、1回の打合せですべてをお聞きできるとは限りません。
けれども、先の6つの観点から社長の置かれた状況をつかめれば、「どんなアドバイスをすれば会社の価値を効果的に高められるか」はおおよその見当がつきます。
先日もある打合せで社長のお話をいろいろとお聞きしているうちに、その会社の損益計算書や貸借対照表のイメージがだんだん膨らんできました。
そして、話が一段落してからその会社の決算書を見せてもらったところ、ほぼイメージしていた通りの決算内容でした。
中小企業の場合、「お金が足りない」というお悩みが一番多いです。
けれども、本質的な問題から目を背けてお金が足りないから銀行に借りるということだけでは、しばらくすると同じ問題がまた発生します。
問題は必ず解決できる。私はそう信じています。
ただし、それには条件が一つあります。それは経営者が問題から目を背けないこと。
先の6つは私なりの観点ですが、物事を一面的な側面だけから見ていると、判断を間違えます。
社長に必要なのはドクターG、総合診療医の視点です。しかし、プレイヤーとして側面を外せない中小企業の社長の場合は、どうしても片寄った視点に陥りがちです。
私の場合は先の6つの視点からも分かるように、管理的な側面から物事を捉え、論理的に考えることが多いです。一方、営業的なセンスや感覚的にイメージすることはあまり得意ではありません。
そこで、できるだけ自分にない視点を持っている人とお話することで刺激をもらうよう意識しています。
会社の機能としては、社外取締役や監査役が社長が足りない視点を補うのが本筋です。でも、中小企業の場合、社長以外の役員が本来のチェック機能を果たせるかというとはなはだ疑問です。
このため、社長が意識して新たな視点を取り込まないと問題解決が遅れてしまう傾向にあります。
あなたは定期的に多面的な視点を取り入れているでしょうか。
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