知恵の和ノート
正しい選択への固執が選択の不自由を招く(第33話)
結果にだけ拘って取捨選択するのは半人前の経営者
結果に至る過程を取捨選択するのが一人前の経営者
ベストセラー作家で公認会計士の山田真哉先生が書かれた「問題です。2000円の弁当を3秒で『安い!』と思わせなさい」をお読みになったことがあるでしょうか。
営業妨害はしたくないのでここで回答を書くのは差し控えますが(笑)、数字を比較することで、数字に対する印象は大きく変わってきます。
一方、以前イトーヨーカ堂さんでは、「18,000円の羽毛布団と58,000円の羽毛布団を並べて売っていたが、後者はあまり売れなかった。そこで、あることをしたところ、58,000円の羽毛布団の方がよく売れるようになった」そうです。
その売り場ではいったい何をしたのでしょうか?
これは、競争戦略の専門家である鈴木貴博さんの書かれた「戦略思考トレーニング2」で紹介されていたエピソードです。
これも数字を比較することがヒントになります。
ご興味のある方はしばらく自分で考えた後、その答えが正解かどうかを本で確かめていただければと思います。
弁当の事例はおそらく創作上の事例で、羽毛布団の事例は実際にあった事例です。
いずれにせよ、大事なのは答えが正しいかどうかではありません。大事なのはこれらの事例を踏まえて、自社の商品を売る際にどう考えて実行するかということです。
よく、商品なら「松竹梅と3種類用意せよ」と言われます。この時、真ん中に自分の一番売りたい商品を置くとよく売れるという説明が加えられたりします。
もちろん、このセオリー通りの結果が出る場合もあります。一方で、予想とは違った結果が出てしまう場合もあるのではないでしょうか。
商売においては商品がちゃんと売れる方法というのが正しい選択になります。
しかし、残念ながら現実の世界においては、会社が「これが正しい選択だ!」という方法を見つけても、商品がまったく売れなければ間違った選択をしたという評価につながります。
そして、ビジネスでは結果がすべてという観点からすると、間違った選択をした社員はダメ社員という烙印が押されてしまうのです。
しかしながら、10年、20年と長くビジネスを続けていく過程においては、常に正しい選択をし続けるのは不可能です。
また、正しい選択をすることにばかりこだわってしまうと、失敗を恐れるあまり
「過去に似たような事例があるか?」
「専門書にはどう書いているのか?」
「他社はやっているのか?」
ということばかり気にして、第三者から見ると「どこかで見たことあるような・・・」というような平凡で特徴のない選択をすることにもなりかねません。
商品が売れるか売れないかは市場のみが答えを知っています。つまり、最終的な選択権は会社ではなく商品の購入者が握っており、会社ができることにも自ずと限界があります。
このため、経営者が気を使うべきは選択に至るまでの過程です。
最後は自分の勘に頼るにせよ、
- 商品の価格は本当に10,000円でいいのか、やはり15,000円で売るべきではないのか?
- 商品の色は黒と白だけでよいのか、赤はいらないのか?
- この機能は本当に必要なものなのか?
といったことを毎回どこまで詰めきったのかが大事です。
正しく選択を続けていれば、必ずいつかは正しい選択に辿りつきます。要はその選択に至るまでの過程で手を抜かなかったかどうか。
そして、中小企業の場合、正しい選択に辿りつくまでの時間をできるだけ短縮しないと、いつかは資金不足になります。このため、中小企業こそ選択に至るまでの過程をより確かで再現性のあるものにする必要があります。
「勝ちに不思議な勝ちあり、負けに不思議な負けなし」というのは野村克也さんの名言ですが、正しくない選択をした時こそ、結果だけに固執していつまでもくよくよするのではなく、選択をするまでの過程をすぐに振り返ることがポイントです。
少なくとも、価格、数量、時間の観点から徹底的に詰めるべき点は詰めることを励行しましょう。
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