知恵の和ノート
事業計画を「作る」から「使う」へ(第20話)
作るだけの事業計画は胡散臭く、使い続ける事業計画は泥臭く
私が事業計画を本格的に作ったのは前職のベンチャー企業の時です。
銀行員の時は取引先の事業計画を精査することはあっても、自ら作ることはありませんでした。また、楽天銀行の立上げをやっている時は人員計画や経費の見込など総務部長として部分的に事業計画作りに関与しましたが、売上見込については他の人の担当。
このため、売上から経費、資金調達の予定など、事業計画全体を作ったのはベンチャー企業で2億円を資金調達した時が初めてでした。
自分一人で事業計画を作成して分かったことは、事業計画を作ることは比較的簡単であるということです。
一方で、作った事業計画を使うというのはかなり難しいということです。
極端なことを言えば、エクセルなどの表計算ソフトを使えば、誰だってそれなりの事業計画を作ることは可能です。
特に「これから本格的に事業を始めます!」という場合
- 市場の規模は全体でこれぐらいあります
- 当社は〇年間で市場シェアの●%を獲得します
- 商品開発には□ヵ月かかり、費用は■億円です
- 営業には△人投入し、今後▲年間でこの売上を達成します
という指標ができればあとはそれに見合うように数字を作っていくことになります。
もちろん、慣れの問題はありますが、未来のことは誰も分からないので、数字の整合性が取れるように事業計画を作ることはそんなに難しいことではありません。そして、その計画の裏付けとなる証拠や過去の実績をきちんと揃えることができれば、必要なお金を調達することも現実のものとなります。
けれども、大事なのは実際にお金が調達できた後です。
収入と支出で言えば、支出の方はほぼ予定通りに出ていくのに対して、収入の方はなかなか思うようにいかないのが普通です。
そして、思うようにならない収入をカバーするために、予定外の支出を行うと、さらに計画との乖離が生じ、再び、お金が足りなくなるという状況に陥ることも少なくありません。
多くの事業計画は「お金を集める」「人を集める」という目的で作られるため、いわばよそ行きの顔をしています。
もちろん、魅力的な事業計画でないとお金が集まらないし、優秀な人が興味を持ってくれません。
けれども、その事業計画が会社の業務フローや社内目標と結びつかず、地に足がついたものでないと、数字だけが一人歩きして一度は上手く行っても次につながらない結果になります。
事業計画はあくまで仮説。そして、仮説は検証してこそ初めて意味を持ちます。
もちろん、最初からできるだけ正しい仮説を立てるのが理想ですが、会社を取り巻く情勢の変化が激しい中、過去の経験則に基づいた仮説が必ずしも正しいとは言えない状況にあります。
このため、事業計画で問われるのも将来に向けて仮説を作り、検証を続ける経営者の姿勢です。そして、この経営者の姿勢は銀行などの外部に向いてるだけでは不充分で、社員や関連先などの内部に対しても伝わるものでなければなりません。
お手元にある事業計画、はたして社員の腹にもストンと落ちているものかどうか。
せっかく表面だけ綺麗に着飾ってもよそ行きの顔では長持ちしません。
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