ミセルチカラの磨き方
「社員の気持ちは分かる」だけじゃ危ない。経営判断を誤らないための思考習慣
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「今は賃上げのニュースを見ても微妙です」
昨年末に社長に就任されたクライアントさん。
社員の時は賃上げのニュースを見るたびに「そうだ!」「そうだよねぇ」と思っていたのに、いざ経営者になって、社員に給料を払う立場になると、単純に「そうだ!そうだ!」とは思えなくなったと語っておられました。
「相手の立場に立ってよく考えてみろ」
よりレベルの高い仕事をするために、よく言われます。
しかしながら、
・想像の範囲内で「相手の立場に立って考える」
・実際の場面で「相手の立場に立って考える」
では大きな違いがあります。
前述の社長さんのように、実際に給料を支払う側になると、
・「給与を上げて欲しい」と言う社員の気持ちも分かる
一方で、今の会社の状況だと
・5%の賃上げをすると、今期は赤字になるかもしれない
・賃上げしても、社員のパフォーマンスがすぐに上がるとは限らない
といった事情も考慮しなくてはなりません。
社長などより高い役職につくと、
考えなければならない要素が増える→最適解を見つけにくい
という状況になります。
その中で決断しなくてはなりませんが、「これが正解だ」というものは残念ながらありません。
「賃上げしない」という決断をした結果、「それなら転職します」として、退職する社員が出てくるかもしれません。その結果、人手が足りなくなり、仕事が回らなくなって、賃上げしなかったけれど、結果的に赤字になるケースもあります。
このため、大切になるのは、「どこまでだったら自分としては許容範囲なのか」を予め見積もる力です。
・賃上げして500万円までの赤字だったら大丈夫
・賃上げして、社員の仕事振りが変わらなくてもやむなし
・せっかく5%も賃上げしたのに、社員から不満が出ても仕方がない
・社員が3人辞めても、なんとか仕事は回していける
この許容範囲は会社の状況によっても違いますし、経営者の価値判断の基準によっても違います。
そして、この許容範囲は赤字どうかといった「定量的」なものもあれば、社員が不満を言うことでこちらの気持ちがへこむといった「定性的」なものもあります。
「定量的」な許容範囲はちょっと手間でも計算すれば把握することが可能です。日頃から利益の見える化に取り組むことで、誰でも客観的にベストの判断を下せるようになります。
一方の「定性的」な許容範囲は人によって感情の動くポイントが異なるので、自分の中の判断基準をハッキリしておかないと、決断した後、「あぁ、あの時はこうするんじゃなかった」というように後悔することになります。
そして、経験則から申し上げると、後者の「定性的」な許容範囲が曖昧なために結論が先延ばしになり、業績が伸び悩んでいるケースが多いです。
したがって、よりレベルの高い仕事を続けていくためには、
・相手の立場に立って考える
ことに加えて
・自分の価値判断基準に立ち返って考える
ことがポイントになります。
特に経営者の場合、個人の心情とは別に相手にとっても厳しいことを決断しなくてはならないことがあります。その際、相手の立場に立って考えるあまり、「嫌われたくない」「ケチな人だと思われたくない」という思いに引きずられると、経営判断を間違える恐れあり。
悔いのない決断を行うためにも、自分の価値判断の基準を言語化して自覚した上で、相手にとってもより良い結果になることを信じて日々行動しましょう。
なお、自分の価値判断の基準に立ち返って考えたい方は「こちら」がお役に立ちます。
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