ミセルチカラの磨き方
小さな問題を見逃すな!成長を生むチャンスへの転換術
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
会社において経営者が抱える課題の中には、一見すると小さな問題が、実は組織全体に広がる根深い課題を映し出しているケースが多くあります。
経営者として「これは当然やっているだろう」と思い込んでいる業務が、実際には行われていなかったという事実に直面することもあるでしょう。
例えば、「部長は部下がどんな仕事をしているかを把握している」と思い込んでいたとしても、その部長自身は「部長の役割は部全体の仕事を見ることであり、部下の具体的な業務内容は各課長が把握しているべきだ」と考えている場合があります。
こうした思い込みのズレが、業務フローの改善や問題解決の際に大きな障害となります。社員同士の間で憶測が飛び交い、最終的に誰も実態を正確に把握していない、という状況が生まれるのです。
責任の矮小化と組織的課題の見逃し
このような状況下でよくある間違いは、問題を誰か一人の責任に矮小化して解決を図ろうとすることです。
例えば、
「あれはA君が属人的にやったことです」
「これはBさんのマネジメントが原因です」
「C部長の指示通りにやっただけです」
といった言葉が挙がることがあります。
一見すると、問題の原因は特定され、解決への道筋が見えたように思えるかもしれません。しかし、このアプローチには大きな落とし穴があります。それは、問題の背景にある組織的な課題を見逃してしまうことです。
たしかに、問題の直接的な原因が一つである場合もあります。しかし、その原因が発生するまでのプロセスや、組織全体の体制が問題を助長していた可能性を無視してはいけません。背景にある課題を掘り下げない限り、同じ問題が再発するリスクが高いのです。
ゴキブリ理論に学ぶ問題の本質
よく言われる話ですが、ゴキブリが一匹見つかった場所には、その何十倍もの数が隠れているといわれます。同じように、ある問題が表面化したとき、その裏には見過ごされてきた組織的な課題が複数潜んでいる可能性があります。
経営者として重要なのは、表面化した問題を一つの原因に矮小化するのではなく、その根本的な原因にどこまで踏み込むかです。一つの課題に向き合うことで、それが組織全体にどのような影響を及ぼしているか、また他にどのような課題が隠れているかを探る必要があります。
中小企業特有の課題と意識的な改善の必要性
中小企業においては、定期的な人事ローテーションが行われないことが多く、社員が固定的な役割を長期間担うケースが一般的です。このような状況では、業務の属人化が進みやすく、組織の中に見えない課題が蓄積されがちです。
さらに、「今まで問題が起きていないから大丈夫だろう」といった無意識の安心感や、憶測に基づいた判断が蔓延すると、日常業務の課題が埋没してしまいます。これを防ぐためには、経営者が意識的に課題を見つけ出し、改善の取り組みを推進する必要があります。
問題解決の責任と経営者の役割
社員が失敗を恐れるのは当然のことです。上司に怒られるのを避けるため、自らの失敗を率直に認め、改善に向けた提案をする社員は稀です。このような状況下で、問題を表面化させるのは経営者の重要な役割です。
もし部下にだけ責任を負わせ、自分の責任を回避する態度を取れば、それは一種のパワハラと言えるでしょう。経営者としての責任を果たすためには、指示した通りに物事が進まなかった場合に、その責任をきちんと引き受ける姿勢が必要です。
組織課題へのアプローチ方法
組織的な課題に取り組むためには、以下のようなステップが有効です。
1.問題の可視化
問題の表面化を恐れず、社員から意見を聞き、現状を正確に把握します。
2.原因の深掘り
表面的な原因だけでなく、組織や体制、コミュニケーションの在り方など、問題の根本的な原因を探ります。
3.全員参加の解決策の策定
問題解決には現場の社員も巻き込み、多角的な視点からアプローチします。
4.継続的なフォローアップ
解決策を実施した後も、その効果をモニタリングし、必要に応じて修正を加えます。
5.文化の醸成
問題を共有し、改善に取り組む姿勢を組織全体で持つ文化を育てます。
小さな問題を大きな成長のチャンスに
経営者が小さな問題を見逃さず、その裏に潜む組織的な課題に向き合う姿勢を持つことで、会社全体の成長を加速させることができます。小さな問題が浮き彫りにする組織の課題を改善することで、社員が働きやすい環境を整え、長期的には生産性や業績の向上にもつながります。
経営者としての責任は、表面的な問題解決にとどまらず、組織全体の成長を見据えた行動を取ることにあります。それこそが、経営者としての真の役割であり、会社の未来を切り拓くための鍵です。
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