ミセルチカラの磨き方
「利益は二の次」が命取り!会社を傾ける経営者の思考パターンとは?
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「備蓄米では利益を稼がない」
政府の備蓄米の放出を受け、農協の全国組織である全農では「販売にあたっては、落札金額に運賃・保管料・金利・事務経費など必要経費のみを加える」という方針を打ち出したそうです。
最初にニュースでこの内容を知った時、感じたのは「利益」という言葉の曖昧さです。
10,000円で仕入れた商品を15,000円で売れば、利益は5,000円です。会計的には売上総利益、いわゆる粗利というもの。
しかし、商品を売るにあたっては
・商品を運ぶための運賃
・商品を保管しておくための保管料
・商品を仕入れる際に銀行から借りたお金の金利
・商品を売るにあたっての広告宣伝費等の費用
・商品を仕入れしたり、販売したりする社員の人件費
等のいろいろな経費がかかります。
決算書では売上原価、販売費・一般管理費、営業外費用などにあたるものを差し引いた金額が利益として計上されています。つまり、何を、どこまで、必要経費として認めるかによって、利益の金額は変わってきます。
そして、会社においては、仕入価格は頭に入っていても、最終的にいくらで商品を売るかを決める際に、どこまでの経費をカバーするのかが曖昧なために、毎日頑張って売上を上げているのに、利益があまり出ていないというケースがあります。
この点、ニュースの見出しにあった「利益を稼がない」という表現は誤解を招く恐れがあります。なぜなら、必要経費を加えて販売するのであれば、落札価格に一定の利益を乗せて必要経費は最低でもカバーすると解釈できるからです。
日本の場合は、「赤字覚悟です!」みたいな発言を高く評価する傾向にあります。今回の全農さんに関する報道も、「米が高い」という国民の声を多分に意識した内容になっているため、字面通りには受け取れません。
いずれにせよ、売上価格をうまく設定して、必要経費をカバーできたとしても、それだけでは会社は事業を続けていくことができません。
例えば、銀行からお金を借りていて、毎月300万円ずつ返済がある場合。
もし、必要経費をカバーした後の利益が0円であれば、毎月300万円ずつ手元のお金が減っていく計算になります。
また、仮に無借金経営で毎月の借入金の返済額がない場合でも、利益が0円であれば、将来に向けた設備投資や人材育成に関する投資ができません。このため、利益を出して将来に向けた投資を継続的に行なっているライバル会社と大きく差がつく結果になります。
このため、会社として事業を続けていく観点からすれば、「利益を稼がない」というのはあり得ないことです。
このように申し上げると、「そんなこと、当たり前だろう」と言われるかも知れません。
けれども、「『利益を稼ぐ』なんて当たり前だ!」と反論する経営者に限って
- 一つの商品で最終的にどのくらいの粗利が出るのか
- その粗利で、どこまでの必要経費をカバーできるのか
- 必要経費をカバーした後で、毎月の借入金の返済額も問題ないのか
をきちんと分かっていないことが多いです。
そして、目先の売上を確保するために、「今回は赤字覚悟でやった」とか「最低限の利益は確保している」と自らを納得させて、本質的な問題から目を背けています。
まずは必要経費をしっかり計算した上で、最低でもいくらで売る必要があるのかをしっかり見定めましょう。
それにしても、備蓄米の販売価格がいくらになろうが、そのお米は生産した農家の方々が過去に一定の価格で販売したものであり、農家さんの収入が追加で増える訳ではありません。主食であるお米の安定供給を実現するには、まだまだ改善すべき事項が多いように感じます。
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事業計画は下から作り、少しずつでも利益を見える化して目標に近づける
たとえ見たくなくても数字と向き合って、必要な利益の金額をつかみ、その利益を少しずつでも社内で見える化することで会社は成長します。
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