ミセルチカラの磨き方
コアコンセプトを馴染ませて、3つの壁を乗り越える
ヒーズ株式会社の岩井徹朗です。
「コアコンセプトをどんどん馴染ませています」
先日初めて自主開催のセミナーをやったクライアントさん。終わった後に、こんなコメントを残されていました。
弊社では、経営者の本質的な価値観であるコアコンセプトを掘り下げることから始めています。
けれども、自分のコアコンセプトを見つけて、言語化することはあくまで出発点です。経営者であれば、自分のコアコンセプトをどうやって仕事に活かしていくかが肝要です。
コアコンセプトを商品にも反映させ、具体的な売上につなげてこそ始めてその価値を発揮します。
コアコンセプト自体はあくまで自分一人の問題。
我々はそれが見つかるように、コーチングやプロファイリングを駆使してお手伝いします。けれども、掘り起こす過程自体は一人だけの課題であり、最終的に見つかった言葉がしっくりくるかどうかはご本人だけが答えを持っています。
コアコンセプトが見つかった後に立ちはだかる3つの壁
一方で、コアコンセプトが見つかった後。
コアコンセプトは最低限本人が分かっていればよいのですが、実際の仕事においては、新しい商品のコンセプト作りや社員への指示において、お客様や社員という第三者を否応なしに意識せざるをえません。
この時にはたいてい3つの壁にぶつかります。
- 業界の壁
- お客の壁
- 社員の壁
業界の常識という壁
まず、業界の壁。
業界には古くから伝わってきた慣習があり、「これをやってはいけない」という不文律があります。
以前日経新聞で連載されていた小説「琥珀の夢」。
サントリーの創始者である鳥井信治郎氏のお話ですが、ワイン事業がようやく軌道に乗り始めた頃、ウイスキー事業を始めようとする伸治郎氏に対して皆が反対する場面が描かれていました。ウイスキーができるまで5年、10年と長く時間がかかり、その間経費だけかかって、売上にならないため、商売を大きく傾ける恐れがあるという理屈です。
この反対理由はキャッシュフロー経営の観点からは理にかなっています。ようやく、売上が安定し始めた頃に多額の設備投資を行って、その資金回収はかなり先になるという話ですから、キャッシュフロー経営的には非常に難しい話です。
しかし、信治郎氏は「誰もやってへんさかい、やるんだすわ。商い言うもんはそういうもんやと、わては考えてま」ということで、ウイスキー事業に乗り出します。
我々はその後のサントリーの成功を知っているがゆえに、「さすが、サントリーの創業者は違う」というように思ってしまいがちです。
しかし、一方で、資金繰りがまだ不安定な時期に多額の設備投資を行って、その後の資金繰りが回らなくなった例は枚挙にいとまがありません。つまり、業界の常識から言えば、先輩経営者の「ウイスキー作りなんて止めておいたほうがいいよ」という助言の方が王道であり、正解です。
だから、あなたが自分のコアコンセプトに沿って「〇〇をやりたい」と言い出した時に、「そんなのは邪道だ!」「業界の秩序を乱すものだ!!」という反対の声が上がることも充分にありえます。
既存のお客さんも壁になる
次にお客の壁。
新しい商品コンセプトを打ち出した時、今までのお客さんのうち100人が100人とも「それ、いいね!」と言ってくれるとは限りません。
「なんだかちょっと違う」「前の方がしっくりくるけど」というように否定的な意見が返ってくることもあります。
「価格が安いから」という理由で商品を買ってくれていたお客さんは従来より高くなった商品に対して、見向きもしなくなるかもしれません。
特に会社の姿勢が大きく転換した時に、一時的に売上が落ち込むことはクライアントさんでも、時々起こっています。
身近な社員も壁になる
そして、社員の壁。
経営者が新しいことを始めようとした時、社員の反応がいま一つなのはよくあります。
「社長がまたおかしなことを言いだした」
「それより目の前の仕事を片付けないと・・・」
「今のままでもよいのでは?」
コアコンセプトを軸にした新しい商品コンセプトがお客さんに好評であっても、社員がなかなかやる気になってくれないということは意外と多いのではないでしょうか。
乗り越えられない壁はない
このように、たとえコアコンセプトが見つかった後でも、それを浸透させていく過程においては、いろいろな壁があります。
このため、せっかく自分の価値判断の基準が分かった後でも「やっぱりダメかも?」と気持ちがざわついて、また元の状態に戻ってしまう危険性もあります。他人の評価で自分の軸がゆらいでしまうという感じでしょうか。
しかし、ここで留まってしまうのはとてももったいないことです。
業界の常識は変わる
例えば、業界の壁。
私が銀行に勤めていた時は「銀行員は取引先にアドバイスしてはいけない」というのが常識でした。
一つは、余計なアドバイスをして、上手くいかなかった時に責任を取らされるのを避けるという意味合いはあります。建前上は自分がアドバイスした先には客観的な融資審査ができなくなるので、客観性を保つ観点からも、取引先にアドバイスはしないという建て付けです。
しかし、今の現実はどうでしょうか?
金融庁は銀行に対して、取引先にアドバイスすることを積極的に求めるようになっています。
業界の常識は永遠ではないのです。
お客さんの壁を乗り越える3つの方法
次にお客の壁。
新しい商品コンセプトとマッチしないお客さんとどう向き合うか。
財務体質的にも余裕があれば、取引を止めるという選択肢があります。
遅かれ早かれ、自分のコアコンセプトと合わないお客さんとはお付き合いが終わりを迎えます。スパッと止めることができれば、それがベストです。
そうは言っても、会社としては事業を続けていくことがベース。一度に大口の取引先を失うのは事業に支障が出るので、割り切ってつきあうという選択肢もありです。
この点、たとえ「自分のコアコンセプトとは違うな」というお客さんであっても、極端なことを言えば、「お金のため」と割り切って期限を区切ってお取引することは経営者としては必要な要素です。
そして、一度や二度では理解されなくても、分かってもらえるよう説明を続けるという対応もあります。これは根気のいる取組みですが、「大事なことは最低8回は言う」ことが基本なので、手を変え、品を変え、情報を発信し続けましょう。
いずれにせよ、けっして乗り越えられない壁ではありません。
社長が変われば、社員の壁も乗り越えられる
そして、社員の壁。
もしかすると、一番高い壁と言えるかもしれません。
けれども、自分のコアコンセプトが分かると、次に気になるのは人のコアコンセプトです。このため、経営者が手間ひまを惜しまず、一人ひとりの社員と個別に向き合う姿勢を続けていけば、必ず突破口は見出せます。
特に中小企業の場合は、比較的社長と社員と距離が近いために、社長が自分の裏のコアコンセプトを意識して、いったん社員の言うことを受け入れる姿勢を示すことで徐々に社員の反応は変わってきます。
目の前の壁は会社が新しいステージに踏み出していくために必要な課題です。
壁は会社が成長を目指す時にだけ出現します。そして、乗り越えられない壁はありません。
自分に一番合ったものを取り入れて馴染ませる
コアコンセプトは自然からできた鰹節や昆布のようなものだと最近感じています。
出汁をとれば、ほのかな味がします。その自然の恵みを口にした時、手軽に使える調味料ではけっして味わうことのできない、五臓六腑にしみわたる美味しさがあります。
人の身体は食べたものからできると言われています。どうせなら、自分の身体にとって一番合ったものをずっと取り入れて身体に馴染ませるのがベストです。
最初はその変化に気づかないこともあります。しかし、3ヵ月、6ヵ月、1年と馴染ませていくうちに、自然と自分自身も、会社も、周りを取り巻く環境も変わってきます。
コアコンセプトを日々の活動の中でも常に意識しているクライアントさん。今後のご活躍が益々楽しみです!!!
ヒーズでは、弊社の日頃の活動内容や基本的な考え方をご理解いただくために、専門コラム「知恵の和ノート」を毎週1回更新しており、その内容等を無料メールマガジンとして、お届けしています。
上記のフォームにご登録いただければ、最新発行分より弊社のメールマガジンをお送りさせていただきます。お気軽にご登録いただければ幸いです。